適正技術で持続可能社会へ 「APEX」の田中直さん イ語版を出版 

 インドネシアで環境保全などに取り組んできた非営利法人(NPO)「APEX」の代表理事を務める田中直さん(63)の著書「適正技術と代替社会―インドネシアでの実践から」のインドネシア語訳が出版された。30年近く環境保全、向上に携わってきた田中さんとAPEXの活動内容が紹介されている。田中さんは「途上国を支援する際には、その国に合わせた『適正技術』が必要だ」と語る。
 インドネシア語版のタイトルは「Teknologi Tepat Guna dan Dunia Alternatif」で、コンパス・グラメディアから1月に出版された。
 田中さんは、高校時代から環境問題に興味を持っており、東京大学工学部を卒業後、大手石油会社に勤務した。入社した時期は、オイルショック後で、石油に変わる代替エネルギーの開発に携われる可能性が高いと考えたからだという。
 会社でバイオテクノロジーや排水処理に関する知識を蓄える一方で、83年からは発展途上国の問題を学ぶ勉強会を発足させる。アジア地域の現地NGOとの協力関係を構築するなど活動の幅を広げた。
 86年は初来イし、中部ジャワ州スマランで、低所得者に安価な住宅を提供しているヤバカ財団との協働活動を開始。翌年のAPEX設立につながった。99年には退職し、APEXでの活動に専念した。
 APEXはジョクジャカルタ特別州で、ディアン・ディサ財団と排水処理事業やバイオマスエネルギー分野で協力。深刻化するインドネシアの水質汚濁問題の緩和、解決のために中小企業向けの排水処理技術を開発した。開発には「適正技術」が適用された。
 田中さんは適正技術を「発展途上国の人々が使えるように安価で、運転管理が簡易な、その土地の社会、経済、文化に合ったもの」と説明する。ジョクジャカルタでは、一般的に排水処理機器の触媒に使われるプラスチックを、現地で採れるヤシの繊維で代替。製造、管理コストを格段に下げることに成功した。バイオマスエネルギー事業などでも、適正技術を用いた活動をしている。
 APEXは、ディアン・ディサ財団をはじめ、国内四つのNGOと協力関係を結ぶ。現在は、適正技術を国内に広げるべく、住民への説明会や適正技術の運用者の育成などにも力を注いでいる。 
 田中さんは「経済発展が著しいインドネシアの人々にこそ、持続可能な社会にはどういった技術が必要かを考えてほしい。この本がそのきっかけになってくれれば」と語った。(藤本迅、写真も)

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