北陸新幹線で観光PR ムスリム対応が課題
14日の北陸新幹線開通を受け外国人観光客を呼び込もうと、石川、富山、長野3県が18日、中央ジャカルタのインターコンチネンタル・ホテルで、旅行代理店を対象に商談会を兼ねた観光セミナーを開いた。インドネシアでは北陸の知名度が低いなどの課題をいかに克服していくか、各県の取り組みに注目が集まる。
商談会には現地旅行代理店の関係者ら20人が参加した。長野は軽井沢、白馬村。石川は日本3名園の一つ兼六園、長町武家屋敷。富山は立山黒部アルペンルートを中心に紹介した。
セミナーを主催する国土交通省北陸信越運輸局国際第二課の高橋岳大さんは、「(インドネシアで)北陸の認知度はまだ低いなかで、観光客にいかに新幹線に乗ってもらうかが重要」と話し、沿線ルートのツアーを代理店に作ってもらうことを優先課題に掲げた。
さらに、観光シーズンに宿泊施設やバスが少ないという指摘が旅行代理店から出ていることについて、「北陸全体の協力体制が重要」との見方を示した。
インドネシアでは東京〜大阪〜京都のゴールデンルートをめぐる団体旅行が主流。長野県観光部国際観光推進室の小松幹典さんは、リピーターの誘致に力を入れる。「初めて日本に来た人が長野に行こうと考えることは少ない。新幹線を使って旅行を楽しむリピーターをターゲットにしていきたい」と話した。
昨年の訪日インドネシア人観光客は15万8千人(前年比16%増)だった。
■行きやすい観光地に
各県はムスリムの対応がまだこれからとの指摘がある。英語の案内板や豚肉使用の表記、礼拝スペースの用意などが不十分で、インドネシア人観光客増加の足かせになっている。
それでも北陸各県は、ホテルやレストランなどを対象に、セミナーを開いてムスリムへの理解を深めつつある。7月中旬に開店予定の「三井アウトレットパーク北陸小矢部」には礼拝スペースを設け、周辺ホテルでは、ハラル認証を取得した食材を使ったムスリムフレンドリーメニューも出すようになった。
石川県観光戦略推進室の北口義一さんは「徐々に進めてほしい」と話す。ホテルにムスリム対応を迫っても準備に費用がかかることもある。「豚肉使用を明示するところからはじめるだけでもいい。県の指示を待たないで、各自で理解を深めることが必要なのではないか」と話した。
一方、サウジアラビア・メッカへの大巡礼(ハッジ)のツアーを組むジャカルタの代理店の担当者は、日本はインドネシア人にとって魅力がある観光地とした上で、「ムスリムへの理解がまだ足りない。食事やモスクの有無を気にする人も多く、行きたくても行きづらく感じるのは残念。行きやすくなるように、もっと魅力的な観光地になってほしい」と期待を込めた。(西村百合恵、写真も)
北陸新幹線 東京、長野、上越、富山、金沢、福井を経て大阪までの約700キロを結ぶ。14日に開通した東京〜金沢間は、最短で2時間28分。開通で年間、観光利用61億円、ビジネス利用20億円の計81億円の経済効果が期待されている。政府は敦賀までの延伸を3年前倒しの2022年に設定した。