教育・衛生・母子保健を支援 10件、計8224万円 草の根無償資金協力
日本の政府開発援助(ODA)で相手国の国民生活改善のため小規模な支援をする「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の2014年度の10案件について13日、中央ジャカルタの日本大使館で署名式が開かれた。今回は総額8224万円で、インドネシア各地で健康や生活に直結した事業に協力する。
署名式には資金供与を受ける10団体の代表者ら約50人が出席。冒頭、谷崎泰明駐インドネシア日本大使はあいさつの中で、道路や空港など経済インフラの援助は不特定多数の人が享受するが、「草の根の社会インフラ支援は特定の人が対象。両国の絆、人と人の関係をより緊密にすることが期待できる」と意義を強調した。
続いて供与を受ける団体の代表が順にあいさつに立ち、お礼を述べた。
10案件のうち、パプア州ビアク島では9小学校で手洗い場所やトイレを新設したり改修したりして、衛生環境の改善を目指す。実施団体のルムスラム財団代表者は「ビアクの子どもたちに非常に有益。快適な衛生環境は幼少期の成長や学業成績に良い影響をもたらす。彼らはこの支援を心待ちにしている」と述べた。
西ジャワ州チルボン県のアル・マリファ児童養護施設には女子寮を建設し、広場も整備する。担当する財団の代表者は「今の寮は非常に憂慮すべき状態で、共同トイレは使用に耐えられないし数も足りない」と現状を述べ、「子どもたちのために新しい寮を建設することは私たちの長年の夢でした」と感謝の意を表した。
飲料水に困っているアチェ州のジジム村には浄水装置や監視小屋を設置する。実施団体のミトラ・マンディリ・インドネシア財団の代表者は「浄水確保は各地で社会問題になっている。全土でこの仕事をしていく」と抱負を述べた。
西ヌサトゥンガラ州北ロンボク県では母子保健を向上させるため、助産施設1棟を建設し、同施設と保健所に必要な医療・衛生機材を供与する。供与を受ける人材資源開発研究センターの代表者は「北ロンボク県には2万1553人の乳幼児(5歳未満)がいて、そのうち406人は栄養状態が悪い。5594人の妊婦のうち1190人が貧血などの状態」と数字をあげて説明し、この事業が母子保健の向上と日イの友好をより深めることを願っていると述べた。
また、西ジャワ州バンドン県バンジャルサリ村の小学校には、太陽光発電装置を設置し、電力を供給する。南スラウェシ州ブルクンバ県の中学校では、校舎、実験室、トイレを各1棟を建設し、これまで使った校舎は教員室と図書室に改造する。
(臼井研一、写真も)
◇ 草の根・人間の安全保障無償資金協力 ODAの無償資金協力の一環として1989年から始まった。発展途上国の多様なニーズに応えるための、比較的小規模な援助。教育、医療、保健衛生、災害対策などが対象。供与額は原則1件あたり1千万円以内で、資金の使用期限は契約締結から1年以内。対象団体は草の根レベルで、経済・社会開発プロジェクトを実施している非営利団体で、申請を受けて外務省で審査している。