1ドル1万3000ルピア台に 中銀総裁、通貨安を容認

 銀行間でのドルとルピアの取引の指標となる中銀の参照レート(JISDOR)は5日、1ドル1万3022ルピアをつけた。1998年8月以来のドル高ルピア安水準。心理的目安とされる1万3千ルピア台に乗ったことで市場ではさらにルピア安が進むとの見方が出ている。

 中銀が先月実施した政策金利の利下げ以来、じりじりとルピア安が続いている。中銀は一定のルピア安を容認する姿勢を示しており、アグス総裁は2日、1万3125ルピアまでは許容範囲と発言。5日にも「1万3千ルピア台に乗っても心配はいらない」と述べた。アグス総裁は外的要因が下落の主因と述べ、インドネシア経済は回復基調にあることを強調した。他国の新興国通貨も米ドルへの資金流入により、通貨安が進んでおり、マレーシアの通貨リンギットは5日、09年以来の安値を付けた。
 中銀のアグス総裁は「今年の年間平均レートは1万2500ルピアの3〜5%以内のレンジで考えている」と述べた。アグス総裁の示した1万3125ルピアよりルピア安が進んだ場合の中銀政策に注目が集まる。経済紙コンタンは5日、「1万3千ルピアまでルピア安が進むと、投資家心理が悪化し、すぐに1万4千〜5千ルピアまで動く可能性がある」と指摘した。
 バンバン・ブロジョヌゴロ財務相はルピア安を「中銀が先月に政策金利を0.25%利下げしたためだ」と言明。利下げで、株式市場に資金流入が続き、2日に過去最高値を更新した。
 三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店の西仲崇行副支店長は「このペースで進むルピア安を中銀は容認する動きがある」と分析。株式市場が好調な半面、ここ数日間、債券の価格下落(利回りは上昇)が続いていることを懸念。「(債券価格の下落が)海外投資家による資金流出の兆候であれば注意が必要」と述べ、急激なルピア下落を警戒した。
 ルピア安は原材料を輸入に依存する国内製造業にとって、打撃だ。インドネシア商工会議所(カディン)のナトゥシル副会頭(物流担当)は「ルピア安で輸入額全体が15〜25%ほど膨れている」と指摘。同氏によると、国内製造業は原材料の約75%を輸入しているという。ある日系製造メーカーは今年の事業計画で、ルピアレートを「1ドル1万2500ルピア」に設定しており、それ以上のルピア安では、事業計画の見直しが迫られるという。
 企業のルピア安への懸念に対し、政府は輸出促進の好材料と捉えている。ソフヤン・ジャリル経済調整相は「(ルピア安で輸出が増えれば)一定のルピア安も問題にはならない」と指摘。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領も2日、「現在のルピア水準であれば、問題はない」と述べた。(佐藤拓也、7面に関連)

経済 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly