多目的トンネルが始動 首都高と雨水貯留に利用

 ジャカルタ特別州内の交通渋滞と洪水の緩和を目的に、地下高速道路と雨水貯留施設の機能を併せ持つ多目的トンネル建設計画が動き始めた。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の州知事時代の13年に再浮上したもので、州政府と事業者が調査を進めている。

 事業を請け負う建設会社のアンタルジャ・ムリア・ジャヤ(AMJ)のアグス・シンドハルタ最高経営責任者(CEO)は12日、取材に対し「今年上半期中にも着工し、3年で完成させたい」と話した。すでに同社は現実可能性調査(FS)を終え、11日の州政府との会合で報告書を提出した。
 報告書によると、州が計画する首都高6路線のうちの2路線に導入する。東ジャカルタのバレカンバン〜南ジャカルタのマンガライ間(全長12キロ、高速道路9キロ)と、同ウルジャミ〜中央ジャカルタのタナアバン間(同、高速道路8.7キロ)にトンネルを建設する。それぞれ地下約30メートルで、直径は11メートルほど。トンネルの上半分を高速道路に、下半分は市街地に降った雨水をためたり排出したりする貯留施設に使う。
 建設費は29兆ルピア(2700億円)で、会社が独自に調達し、公的資金は使わない。中国やシンガポール、欧州などの投資家が関心を示しており、資金調達のめどはついているという。工期がずれ込むなどした場合、費用は膨らむ可能性がある。高速道路の利用料を徴収し、供用開始から約14年で建設費の回収を終えるという。
 アグス氏は「州政府が目指す高速道路整備と洪水対策が両立できる計画だ」と説明。大雨が降った際には、いったん内部に水をため、陸上の貯水池にポンプでくみ上げて排水する。地上のインフラ整備でしばしば問題になる土地収用手続きが、トンネル建設ではほとんど不要というメリットもあるという。
 ジャカルタ同様、洪水に悩まされるマレーシアのクアラルンプールでは、同じ仕組みで三層構造の「スマート・トンネル」を建設、2007年に開通した。ジャカルタもこれを参考にするが、今回の調査では欠点もあると分析している。
 雨水貯留時に高速道路を閉鎖するため渋滞が悪化するほか、高速道路と雨水貯留の機能切り替え操作に問題があると指摘。このため、車両用と雨水貯留用の層を上下に切り離すことで解消する。さらにためた水は、トンネル内の照明や通風用の電力を供給するための小規模水力発電に利用できるとしている。
 計画自体はスティヨソ知事時代の05年に持ち上がったが、立ち消えになった。ジョコウィ大統領が州知事在職時の13年に、計画に前向きな姿勢を見せたことで再浮上。州政府内で実現に必要な法的枠組みの整備に向けた検討を進めていた。(道下健弘、アリヨ・テジョ)

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