プロトンと共同生産を検討 アセアン・カーのFSで合意 ACL
インドネシアのアデイプルカサ・チトラ・レスタリ(ACL)とマレーシア自動車メーカー、プロトンは6日、乗用車の共同開発・生産の実現可能性調査(FS)を近く始めることで合意、同日合意文書に調印した。ASEANの有力2カ国が連携し、今年末までに動き出すASEAN経済共同体市場を狙う本格的な「アセアン・カー」になる可能性がある。
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領のマレーシア訪問にあわせて発表した。調印式には同大統領とマレーシアのナジブ首相が立ち会った。
クアラルンプールからの報道によると、両社は将来のインドネシア国内での自動車生産を視野に、事業化の可能性や具体的な協力分野を検討する。
調印式に出席したマハティール・プロトン会長(元マレーシア首相)は「半年ほどかけて結論を出す」と述べた。実現した場合、当面はマレーシアからインドネシアに完成車を輸出、その後インドネシア国内での本格生産に移行するという。同会長は「アセアン・カーの実現のために、インドネシアとの共同事業は有効だ」と話した。
アセアン・カー構想は、昨年10月の大統領就任式に合わせてジャカルタを訪問したナジブ首相が、同大統領に持ちかけていた。
ACLは業界関係者にもほとんど知られていない会社で、メガワティ元大統領側近の元国家情報庁(BIN)長官ヘンドロプリヨノ氏が最高経営責任者(CEO)を務める。関係者は「最近設立されたペーパーカンパニーではないか」としている。ヘンドロプリヨノ氏は地元メディアに「国民車の存在は産業の促進や国内の技術的ノウハウの蓄積という面でインドネシアに大きな発展をもたらす」と話した。
プロトンは1980年代、当時首相だったマハティール氏の「国民車構想」を実現する目的で設立。当社は、三菱自動車工業と資本・技術提携関係にあったが、2004年に資本提携関係を解消し、両社の関係は薄れている。
近年は業績不振に悩んでおり、プロトン側には、日本車が9割以上を占めるインドネシア市場に食い込み、業績回復を目指す狙いがある、と見る向きもある。
インドネシアでも90年代、故スハルト元大統領の三男トミー氏が韓国の起亜自動車(後に現代自動車が吸収)と組んで国民車の製造を目指したがとん挫した経緯がある。
ジョコウィ大統領は5日、マレーシアに到着。6日にはナジブ首相と会談し未画定の海洋境界の画定に向け、両国の代表による作業委員会を設置することや、在留インドネシア人の処遇改善を進める方針を確認した。
会談後の共同記者会見で、ナジブ首相はインドネシア人労働者のための学校を設立することでも合意したと述べた。ジョコウィ大統領はマレーシア側に、発電所や道路、港湾インフラなどへの投資を求めた。観光や人材交流なども積極的に進めることで一致した。
ジョコウィ大統領が就任後、国際会議以外では初めての外遊。7日にはバンダルスリブガワンでブルネイのボルキア国王と、8日にはマニラでアキノ・フィリピン大統領と会談する。(道下健弘)