黒字企業比率、ASEAN5で最低 富吉所長が分析 日系企業実態調査
日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の富吉賢一所長はこのほど、2014年度の「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」をもとに、インドネシアに進出している企業について、他国や過去のデータと比較しながら分析した。
◆下請け企業、利益上げにくい構図
「進出企業の14年営業利益の黒字見込みは60.7%で、ASEAN平均62.7%を下回った。注視したいのが、11年は90%台と、ASEAN5の中で最も高かったが、現在は最下位。ASEAN5の中で一番稼げない国になっている。大企業は7割が黒字、中小企業は4割黒字と他国に比べ差が大きく、下請け企業が利益を上げにくい構図になっている」
◆自動化が顕在化
「コスト上昇への対応策について、3年前には上位になかった項目の『自動化・省力化の推進』がマレーシア、中国に次いで3位に入った。自動化でコスト削減を図る動きが顕在化し始めた証拠だ」
◆人件費、じりじり上昇
「製造原価に占める人件費・材料費の比率について、人件費は17.3%、材料費が60.9%で、物価の変動に影響される環境は変わらないが、毎年じりじりと人件費の割合が上がっている。そろそろ人件費が安いからインドネシアに進出するという企業は終わりという印象を受ける」
◆現地調達率、変わらず
「製造業の現地調達率について、インドネシアは43.1%と、ASEANではタイに次いで2位。一見進んでいるように見えるが、過去4年の調査を比較すると、実はほとんど変わっていない。また、調達先は地場企業が49.3%と、まだ低い印象を受ける」
◆他国の日系企業もライバル
「今後3年で『最も重要な輸出市場国』でインドネシアは日本に次いで2位だった。タイやシンガポール、マレーシアの日系企業はインドネシアを最重要市場と見ている。ASEAN経済共同体を控え、ライバルは国内だけでなく、他国の日系企業も視野に入れなければならない」
◆非製造業、賃金上昇を念頭に
「調査対象国の中で、前年比賃金上昇率が最も高かった。また、インドネシアとフィリピンのGDP格差が約25%ほどでインドネシアが高いことを考えると、製造業のマネジャークラスの賃金はフィリピンよりも低く、今後上昇する可能性がある。また、非製造業は全体的にフィリピンより低いため、潜在上昇力が高い。賃金上昇を念頭に置き経営していかなければいけない」
同調査はジェトロがアジア・オセアニア20の国と地域から4767社の回答をもとに作成。インドネシアからは467社の回答があった。調査の約3割が中小企業で、富吉所長は新規進出企業に偏っている傾向があることを念頭に置いて説明した。