賃金上昇耐える余力ある 「従業員の給与差に配慮を」 奥氏が講演
工場経営のコンサルタントなどを手がける奥信行氏が22日、西ジャワ州ブカシ県チカランの地場企業カワンラマのチカラン事務所で、地元の気質を踏まえた上での人事・総務の対応について講演した。インドネシアの文化に合わせた対応をすることで、「多くの工場は賃金上昇に耐えられる」と指摘した。
日系企業のコンサルタントを務めてきた経験から、工場運営で失敗し、撤退した企業は「日本人が頻繁に怒る社風で、雰囲気が悪い企業が多かった」と振り返る。インドネシア人は仕事を選ぶ上で、給与より、現場の雰囲気を重要視することや、労働評価に敏感な人柄が多いと指摘。個別に人事相談をする時間を作る必要性を強調した。
また従業員同士で給与差などを話し合うことが多く、「最低賃金の引き上げにより、新規採用者と長年勤務している人の給与差が縮まることから、あつれきが生まれる可能性がある」と分析。給与体系を明確にする必要性を指摘した。
最近の労働デモの情報はソーシャルメディアを通じて拡散していることが多く、「容易に情報が広がる反面、情報入手も容易になる」と述べ、事前にデモ情報を入手する仕組み作りが大切と述べた。職場環境の整備も重要と指摘し、モスク(礼拝堂)を建てることで、社内環境が向上し、欠品などが減少している企業を例に挙げた。
工場で出る廃棄物の対処法については、「地域の住民が廃棄物の利権を取り合っていることがあり、廃棄物の処理に悩まされる企業も多い」と述べ、処理方法を地域住民と話し合う必要があると指摘した。
同氏は「インドネシアで操業している工場は部品の不良率が依然高い。日本人経営者が把握していない不良率もある」と指摘。さらに「中間在庫が異常に膨らんでいる企業が多く、機械設備の準備・後始末の段取りが日本に比べ、非常に長いため、生産性を向上できる点が多い」と述べ、人事管理を徹底し、仕事への士気を高めることで、より効率的な工場運営ができると強調した。
セミナーでは、チカラン近郊に工場を構える経営者ら80人が出席し、耳を傾けた。カワンラマが日系企業向けにセミナーを開いたのは初めて。(佐藤拓也、写真も)