【バンダアチェの街角(上)】DJカフェに若者集う モールは「正しい服装」で

 先月26日、津波10年の追悼式典を終えたばかりのアチェ州州都バンダアチェ。インドネシア国内で唯一、シャリア(イスラム法)を施行し、厳格なイスラムの地とされているが、街並みには他の都市と同様の変化も起きている。バンダアチェ市街地を回った。 
    
 バンダアチェ市中心部のロータリー、シンパンリマ。アチェのシンボルであるバイトゥラフマン・モスクから約200メートルの場所だが、連日深夜まで大音量のハウスミュージックが響く。
 音の発信源は「ファイブ・コーナーカフェ」。ロータリーに面した店先にDJブースが設けられ、男性DJがコンピューターに接続した機材を操作して次々と曲をつないでいく。
 この屋外スペースにテーブルや椅子が並び、若者たちがコーヒーやジュースを飲みながらおしゃべりに興じていた。ビールなどのアルコール飲料はなし。「ドリアン・パンケーキ」が人気メニューだ。
 「もともとアチェの伝統的なコーヒーをだすコーヒー店だった。2013年にコンセプトを変え、若者向けのカフェにした」。同店マネジャーのアビットさん(30)が説明する。高級ホテルにもディスコがない街に登場した「屋外DJカフェ」は、瞬く間にバンダアチェの新しいトレンドになり、今では類似のカフェが相次いでオープン。「でもトレンドセッターはこのカフェ」とアビットさんは胸を張る。
 シンパンリマ・ロータリー周辺は新しい文化の入り口でもある。1990年代、アチェ初の米系ファストフードチェーン「ピザハット」「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」がオープン。地元市民だけでなく、アチェ各地から訪れる客でにぎわっている。

▽カラオケボックスも
 ショッピングモールも盛況だ。市南東部のトゥク・ウマール通り沿いに、12年にオープンしたのが「スズヤ・スーパーストアーモール」。8千平方メートルの敷地に建つ4階建てのモールには、ピザハットやKFCも入居し、ジャカルタなどのモールでおなじみのレストランチェーンも店を構える。
 1階には高級車の販売ブースが設けられ、4階にはカラオケボックスの個室がずらり。窓ガラス越しに中をのぞける作りで、女性グループや家族連れがカラオケを楽しんでいた。
 しかし、シャリア(イスラム法)当局は、モールを通じ欧米文化が市民に浸透することを警戒している。モール内には「コーランとハディース(預言者の言行録)に基づいた正しい服装」を図解するバナーを設置。胸部を覆わないスカーフ、身体のラインを強調するズボン、ハイヒールなどを禁じ、靴下を履かず、手首などが露出するシャツの着用なども「誤った服装」として注意を呼びかける。
 北スマトラ州メダンに本社があるスズヤはスマトラ島各地で展開。アチェ北部ロクスマウェにも出店しており、礼拝の時間には路面の商店街やレストランなどと同様、いったん営業を停止する。シャリアにも配慮する新しい商業施設としてアピールしている。
 アチェ州政府がシャリアを導入したのは震災後の06年。先月末には、ムスリムが西暦の新年1月1日を祝うことを禁止する方針を発表。花火や爆竹なども禁じ、バンダアチェ市街地に看板を掲げて市民に呼びかけた。(配島克彦、写真も、つづく)

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