「被災地で課題共有を」 35カ国の代表が参列 アチェ津波10年で追悼式典

 22万人以上の犠牲者を出したスマトラ沖地震・津波から10年を迎えた26日、アチェ州バンダアチェ市で州主催の追悼式典が開かれた。カラ副大統領、アチェ州のザイニ・アブドゥラ知事と、谷崎泰明駐インドネシア大使ら35カ国の代表らが参列。ザイニ知事は「州政府を代表して世界の支援に感謝する」と述べ、国を越えた災害対策の重要性を確認する場となった。

 ブランパタン広場で開かれた式典で、カラ副大統領は国際社会の支援に謝意を示した上で「(津波が起きてから)多くのことが変わったが、特筆すべきことは人々が強い気力を取り戻したことだ」とアチェの人々を賞賛した。
 日本からはバンダアチェ市と復興で連携している宮城県東松島市の高橋宗也・復興政策課長が出席した。
 東松島市は東日本大震災で1109人が死亡、25人が未だ行方不明だ。高橋さんは「私も震災で長女を失った遺族の1人です」と述べ、自身が仮設住宅に住みながら市の復興業務を推進していることを紹介。東松島市とバンダアチェ市は人的交流を通じた災害対策などで協力していることを説明した。
 さらに「被災地を結ぶ大きな連携が新たな知恵と対策を生み出し、地球上で頻発する大災害の防止につながると信じております」と強調した。
 ザイニ知事はあいさつで「われわれはもうくよくよしていてはならない。より良い未来のために立ち上がろう」と呼びかけた。
 式場に被災当時の映像が流れると、涙を拭う出席者もいた。
 津波の犠牲者4万6718人が埋葬されたシロン墓地(アチェブサール県)にはこの日、多くの参拝者が訪れた。その1人のベチャ(サイドカー付きオートバイ)運転手ラシディン・アブドゥラさん(62)は津波で妻と3人の娘、1人の息子を亡くした。「当時は悲しみしかなかったが、今は再婚し、2人の子どももおり希望がある。悲しみは消えないが前に進まなければならない」と語った。 
 スマトラ沖地震・津波は2004年12月26日に発生。インド洋沿岸諸国で22万人以上の犠牲者を出し、アチェ州周辺だけで17万人が死亡した。被災をきっかけに政府と独立派武装組織・自由アチェ運動(GAM)が和解し、約30年にわたる紛争が終結した。(堀之内健史、写真も)

■「避難タワー交流の場に」 バンダアチェと東松島
 日本政府の支援で建設されたアチェ州バンダアチェ市ランブン村の津波避難タワーで、22日から28日まで被災当時の様子や日本の文化を紹介している。アチェ州と宮城県東松島市、国際協力機構(JICA)の共催。地域住民の交流の場として建物を活用することを目指す。
 相互復興で協力するバンダアチェ市と東松島市の仲介役を務める一般社団法人「東松島みらいとし機構(HOPE)」職員の鶴岡信太郎さんはタワーを視察した時を振り返る。「汚れてコウモリが巣食っていた。愛されてないんだと感じた」。
 2004年の津波被災後にJICAの援助で建設されたタワーは、広くて立派だが、普段は使われていなかった。一方、バンダアチェ市には被災後、個人で事業を始めたが、物を売る場所が無くて困っていた人が多くいた。鶴岡さんらはそういう人たちにタワー1階を売り場として提供することにし、手工芸品などを売る店が並んだ。2階ではアチェや東北の被災地の写真などを展示し、被害と復興を伝えている。
 28日までは日本人アーティストによる演奏会も開かれる。震災前からアチェでサーフィンを通して関わりの深かった三浦隆典さんが、アチェの日本文化好きコミュニティ「ほうきぼし」の依頼で、日本やインドネシアのアーティストを約10人集めた。「ほうきぼし」代表のイルマ・ワッフユニさん(29)は「アチェは復興し、元気を取り戻したことを日本人に知ってほしい」と話した。
 バンダアチェ市と東松島市は研修生の派遣などで協力を深めている。研修を終えたバンダアチェ市職員が中心となって生ごみを養殖ナマズのえさや堆肥にするリサイクルを実践している。

■安倍首相メッセージ
 未曾有の天災から10年たった今、被災地は見事に復興を遂げられました。改めて犠牲者になられた多くの方々に心より哀悼の意を表するとともに、これまで深い悲しみを乗り越え、復興に取り組んで来られた全ての方々に心から敬意を表します。
 日本からの様々な支援や協力が、被災された方々の生活再建にお役に立てたのであれば幸いです。また、東日本大震災の際にインドネシア政府・国民の皆様からいただいた温かい支援に深く感謝申し上げます。
 来年3月、日本は仙台で第3回国連防災世界会議を開催します。こうした取組を通じ、防災への国際協力に貢献していく決意です。

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