マラッカ海峡航路測量へ 17年ぶりに実施 日本と沿岸3カ国
マラッカ・シンガポール海峡を囲むインドネシアとマレーシア、シンガポールの沿岸3カ国と日本が来年、同海峡の航路測量を始めることが分かった。日本は財団法人マラッカ海峡協議会などを通じて沿岸国を支援する。測量は沿岸国と国際協力機構(JICA)が1996年〜98年に実施して以来、約17年ぶり。海底の地形が変わっている可能性もあり、対応が求められていた。
関係者によると、測量は2段階に分けて実施する。浅瀬があり、緊急に対応が必要な5カ所については来年の早い時期に開始し、2016年にも作業を終える。同年から18年の間は、航路全体に対象を広げ、比較的水深の浅い海域を調べる。
第1段階の測量は同海峡の航行安全対策を支援するマラッカ海峡協議会や、日本船主協会、日本水路協会が費用の一部を負担し、技術者なども派遣する。より広い海域を調べる第2段階の測量費用は、日本が設置した日ASEAN統合基金(JAIF)から出すことを検討している。
同海峡は水深が浅く、海流の影響で海底の砂が動き、地形が変わりやすい。沈没船などもあり、測量精度も重要になる。このため今回は、測量船から海底に向けて放射状に音波を発信し、反射で海底地形を調べる「マルチビーム」方式を初めて採用する。前回測量は船の真下にしか音波を出さない「シングルビーム」方式だった。海底を線でしか捕らえられないシングルビームと異なり、マルチでは海底を「面」で把握でき、高い精度が期待できる。
同海峡は年間12万6600隻(日本財団による2012年の調査)が通るシーレーン(海上交通路)で、通航量の割に航路が狭い。タンカーなどの事故が起きれば大規模な環境汚染につながりかねず、安全・環境のためには正確な海図が不可欠だ。日本は伝統的に海峡の利用国としての比重が高く、1969年〜75年の第1回航路測量以降、標識の設置や維持管理などを行ってきた。(道下健弘)