「工場自動化進める」 地方・他国へ投資分散  労働者は将来に不安も 日系企業の最賃対応

 2015年の最低賃金の平均上昇率は約12%と、昨年とほぼ同じ上昇率の中、ジャワ島内の主要都市は前年比20%前後の上昇率でジャカルタを上回る都市もあった。日系企業は業種にもよるが、「来年も厳しい」という声が多い。                                                     
▼想定内も、厳しい
 中部ジャワ州スマラン市の日系製造業幹部は「事業計画では、10%ほどの上昇を見込んでいた」と、前年比18%増の168万ルピアの決定に難色を示した。「昨年の賃金交渉は4回の労使交渉の末、決定した。今年も交渉は長引くだろう」と肩を落とした。
 東ジャワ州スラバヤ市の15年最低賃金は271万ルピア。昨年20万ルピアあったジャカルタ特別州との差はなくなった。東ジャワ日本人会の河口裕司常任理事長は「工場の自動化を進め、従業員を減らさざるを得ない企業も出てくるだろう」と懸念した。
 生産性を上回る最低賃金の上昇は企業に負担がかかる。ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)の野波雅裕理事長は今回の賃上げについて、「生産性などを考慮した議論がされずに決定している県・市もある」と指摘した。
 毎年、250万〜300万人の雇用が生まれる中、縫製工場などの労働集約型産業は、雇用の受け皿になることから、非合理的な最低賃金の上昇は工場の自動化を促す反面、雇用を減らす動きにもつながる。
▼イ地方か、メコンか
 賃金上昇はインドネシアだけでなく、東南アジア各国で上昇を続けている。カンボジアでは、14年に続き15年も前年比20%を超える最賃が発表された。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)の鎌田慶昭・投資アドバイザーによると、最低賃金の上昇が進出の可否を決める決定的なな判断要素にはなっていない。各企業はインドネシアを大きな市場とみており、最賃が急上昇しても有望な投資先であることに変化はないという。
 一方で、「輸出拠点として見る場合、インドネシアの地方か、所得が低いカンボジアなど、メコン川流域の地域に進出を検討する企業も出てくるだろう」と話す。業種によっては、倉庫を都市圏の工業団地に設置し、より人件費が安価な地域で工場を経営する企業もでてきているという。
▼1人なら足りるが…
 北ジャカルタにある日系企業工場に勤めるアスップ・プルマナさん(22)は職業訓練高校(SMK)の卒業生。一人暮らしをしながら、母に仕送りする。
 月給はジャカルタ特別州の今年最低賃金の244万より高い300万ルピアだ。
 「給料は足りており、今は少しずつなら貯金もできる。だが補助金付き燃料(BBM)の値上げで、生活必需品がどんどん高くなるのは困る」と今後の生活には不安もある。
 同じ工場のブディマンさん(42)は、毎月約500万ルピアと最低賃金の倍近くを稼ぐ。残業が多いと800万ルピアを超えることもあるという。妻と中学3年、高校2年の子どもを養いながら、毎月50万ルピア貯金しており、自身の給料には満足している。「今回決定した最低賃金の金額は、1人で生活する分には足りる金額だが、子どものいる家庭を1人で支えるには足りないかもしれない」と話した。(佐藤拓也、毛利春香)

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