「規範策定、取り組み加速を」 ASEAN首脳会議開幕 南シナ海問題で
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が12日、ミャンマーの首都ネピドーで始まった。初日のASEAN首脳会議では、一部加盟国と中国が争う南シナ海の領有権問題などが主要議題になり、紛争の回避に向けて法的拘束力を持つ「行動規範」の策定に向けた取り組みを加速させることで一致した。
南シナ海ではフィリピンやベトナムなどと中国が対立しているが、中国は7月、石油掘削していたベトナム近海の西沙(パラセル)諸島周辺から撤退。以降、周辺で目立った動きを見せていない。このため、今回の首脳会議の議長声明は「懸念」を表明するものの、「最近の状況を深刻に懸念している」とした8月のASEAN外相会議の共同声明に比べて、表現を弱める見通しだ。
中国とASEANは昨年、行動規範策定に向けた交渉入りで合意したものの、その後具体的な進展がない上、南沙(スプラトリー)諸島で岩礁の埋め立てを進めるなど、実行支配を強める動きも見せている。
一方、2015年末までに発足させるASEAN経済共同体(AEC)についての準備状況を確認。ASEANは経済と政治安全保障、社会文化の3分野で共同体構築を目指してきたが、これまでは関税面など経済分野の連携が先行していた。15年以降もさらなる統合に向け、今後の基本的な方針についても検討した。
このほか、中東で勢力を拡大する「イスラム国」にインドネシアやマレーシアなどからの渡航が相次いでいる問題や、西アフリカで感染が深刻化するエボラ出血熱対策についても討議した。
■日ASEAN首脳会議も
ASEAN10カ国に日本も加わる日ASEAN首脳会議も同日午後開かれ、安倍晋三首相は海洋進出を強める中国を念頭に海における法の支配の重要性などを強調し、海上安全の分野で、今後3年間で700人規模の人材を育成していきたい考えを表明した。
さらに、統合を進めるASEANでインフラ整備が急務になっていることを背景に、調達から廃棄までを勘案したライフサイクルコストや環境への配慮など、質の高いインフラ整備の支援を強化するとした。
会議では、テロやマネーロンダリング(資金洗浄)といった国境を越える犯罪への対処強化を柱とした共同声明を採択した。(ネピドーで、道下健弘、田村隼哉)