「法律通じて助けたい」 国際結婚、就労ビザ手配 イ人専門、行政書士 東京の廣瀬さん
日本で唯一のインドネシア人専門の行政書士がいる。東京・調布市で「さやか行政書士事務所」を開業する廣瀬さやかさん(30)。2年前から在留資格申請など日本で生活するインドネシア人のために法務相談を行っている。日イの交流が増えている中「日本で困っている方を助けたい」と話している。
廣瀬さんは東京生まれ。金沢大学を経て横浜国立大学法科大学院卒業後、2012年1月行政書士試験合格、同年11月「さやか行政書士事務所」を開業した。「街の法律家」として相続、離婚などの手続きを行う一方で、インドネシア人の在留資格の申請も行っている。
インドネシア人専門にしたのはフリージャーナリストの父親・克寛さん(67)の影響があった。克寛さんは日本で10年以上前、取材を通じてインドネシアからの研修生と接触、その過酷な就業実態などを知った。異国の地で苦労する研修生のためにボランティアで日本語教室を開くなど生活全般の相談に乗ってきた。
「父が築いたネットワークを引き継ぎ、インドネシア人が日本で暮らす上で必要な入管手続きをサポートできる行政書士を目指しました」と廣瀬さんは話す。現在仕事の半分はインドネシア人関連で主に国際結婚、就労、永住などのビザ申請や法務相談に乗っている。
国際結婚では先にインドネシアで結婚する場合と日本で結婚する場合とで手続きは変わるが、インドネシア人と日本で結婚生活を送るためには配偶者ビザを申請する必要がある。その際日イ両方での結婚証明書が必要となる。
インドネシアではイスラム方式の婚姻の場合は居住地の宗教事務所、非イスラム方式の場合は同様に民事登録事務所から証明書を発行してもらう。日本側には偽装結婚ではなく真摯な結婚であることを証明するために、恋愛をしていた事実を確認できるメールなどの通信記録も提出する。
煩雑な手続きなためどうしたらよいか分からない人が多い。廣瀬さんは「できるだけ分かりやすくマニュアルを作り流れを説明します」という。最近は東南アジア諸国連合(ASEAN)へ進出を希望する日本企業からのインドネシア人就労ビザの申請依頼が増えている。メーカーなどが留学生を採用し、日本の生産管理システムなどを習得してもらい、その後現地責任者になってもらいたい意向がある。そのための準備を依頼されるという。
日イの交流は年々盛んになって来ている。そのためにも「インドネシア人が安心して日本で生活、仕事ができるようにサポートしていきたい」と廣瀬さん。連日、入国管理局へ行きビザ申請を行う。直接インドネシア人家庭へ出向き相談に乗ることも多い。また仕事とは関係のない「モスクの場所を教えてほしい」「日本語学校で良い所はないか」などの相談も多く寄せられる。
文化が違う日本で暮らすことには悩みや不安がつきまとう。「日本人と積極的に関わることで風習や習慣を知ることができます。その結果仕事や子育てなどの場面で世界を広げられる。今後日イが交流できる場を作っていきたい」と廣瀬さんは話す。
現在日本の行政書士登録者数は4万4948人、361法人(14年8月末日時点)。日本初インドネシア人専門を掲げているのは廣瀬さんだけだ。ブログ「行政書士ノチカラ」ではビザに関する話など仕事現場から見えた日イの状況を発信している。(阿部敬一)