農業人口の減少深刻化 技術、生産性向上が課題に 新政権の優先事項

 インドネシア国内の農業人口減少が深刻化している。ユドヨノ政権はコメなど主要5品目の自給を目指したが、未達成のままで退陣となる見込みで、ジョコウィ次期大統領は農業振興を新政権の優先的課題として掲げる。農業の大規模化と技術革新での生産性向上の実現が焦点となりそうだ。

▼20年後、水田無くなる
 農業問題に関し、ルトフィ商業相は西ジャワ州カラワン県を例に挙げる。1970年代まで同県はコメの一大生産地だったが、首都圏の発展で地価が上昇。利益が出にくいとして、農地から工業団地への転換が進んだ。
 同県の貧困層のほとんどは農民。20年後には水田は無くなる見込みという。
 農民がより大きな稼ぎを求めて都市へ移動する状況も、農業従事者の減少に拍車をかけている。
 中央統計局(BPS)によると、2013年2月の農業従事者の人口は昨年同月比で2.95%減少し4111万人となった。
 03年に100万世帯あった大豆農家は世帯は70万世帯となり、30%減少。トウモロコシ農家は640万世帯から510万世帯で16%減、コメ農家は1420万世帯から1410万世帯と同様に0.7%減少している。
▼土地集約が課題
 ユドヨノ政権が自給を目指してきた主要食糧では13年、コメ、トウモロコシは自給を達成したが、牛肉と大豆、砂糖の生産量は消費量を下回った。
 国内総生産(GDP)に占める農業分野の割合は14.62%で、人口に占める農業従事者比率の35%より大幅に低い。
 原因の一つは世帯当たりの農地の面積だ。平均で0.86ヘクタール(ha)と狭く、生産性が低い。特に西ジャワ州(0.42ha)や中部ジャワ州(0.35ha)、東ジャワ州(0.37ha)など全体の生産量が多い州ほど個々の農地面積が狭く、集約が難しいため、企業参入の障害になっている。
 さらに03年の農林水産業の企業数は4010社で13年は4165社。平均すると1年の増加は15社のみにとどまる。
 ルトフィ商業相は大規模化と最先端の技術を取り入れて、生産性を向上させ、食糧自給達成が必要であると強調している。
▼人口ボーナス期に危機
 「『農業プログラム』を村から進め、富裕層と貧困層の格差拡大を防ぐ」。ジョコウィ次期大統領は、農業振興を優先的に実施することを何度も強調してきた。
 総人口に占める生産年齢人口が高い状態が経済発展を後押しする「人口ボーナス」は、インドネシア経済が有望である理由として頻繁に取り上げられてきたが、経済紙ビスニス・インドネシアは8日付でインドネシアの食糧自給について「人口ボーナスが時限爆弾」との見出しで警鐘を鳴らした。
 人口ボーナス期は2020年〜30年とされており、食糧需要が大きく増えることが確実。さらに「新政権が食糧自給を達成できなければ、インドネシアは人口ボーナス活用に失敗し、危機に陥ることが懸念される」と農業振興政策を早急に実施するよう新政権に求めている。(堀之内健史)

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