特集(下)日系大手2社 伝統市場で草の根営業 

【国民的ブランドに成長 マンダム・インドネシア】

 マンダムは1969年に現地法人を設立。男性整髪料市場でシェア7割強を保持するほど、インドネシア全土にマンダム商品が浸透し「国民的ブランド」となっている。伝統流通と近代的流通の売上比率は50:50。整髪料や化粧品などを扱う同社の場合、八木浩明専務取締役は「伝統流通よりも近代的流通の売上の伸び率が顕著」という。今ではスーパーマーケットなどの近代市場の売上規模が大きくなったが、進出当初は「ほとんどが伝統流通の形態から始まった」と話す。 

▼「奇跡的な巡り会い」
 同社は販売総代理店として地場のディストリビューター(配給業者)1社と契約している。地場配給業者は全国24の支店を構え、さらに細部は27の代理店がカバーし、国内全域に流通している。
 地域別ではジャワ島が57%、次にスマトラ島が22%と、ほぼ人口分布に等しく売上を上げている。八木取締役は優良配給業者との出会いを「奇跡的な巡り会い」と話す。
 インドネシアでビジネスをする上で売上金などの回収リスクに悩まされる局面が多いなか、過去44年の取引の中で1度も売掛金の回収に遅延がないという。 
 定期的に、全国の代理店幹部が集まり、「全国代理店会議」を開く。同社の売上推移の確認やマーケティング戦略の方針などを共有。
 ブランドごとの流通などで抱える課題への打ち合わせを実施する。進出当初から流通経路を確保したことが大きな強みとなっている。

▼現地のニーズを調査
 商品は多様な所得層に受け入れられるため、容量を細分化している。ヘアスタイリングジェルの「GATSBY WATER GROSS」は、サイズを6グラムから300グラムまで計7種類に分けて販売する。価格は400〜1万8千ルピア(約4〜170円)。伝統市場では、1回で使い切る6グラムのサチェット(小袋)タイプが人気だ。
 近年、国内で男性の美容意識の高まりにより、7月から6種類の男性用洗顔「GATSBY COOLIMNG FACE WASH」の販売を開始した。嗜好(しこう)や肌質を調査し、国内で好まれる香りや使用感も考慮し開発した。
 新商品も大小二つの容器を用意し、伝統市場と近代市場それぞれへ売り込む。11月からは男性用化粧水の販売も予定している。

▼近代市場戦略
 売上の伸び率が顕著な近代市場では商品販売担当者を増員し、店頭巡回を強化。日本からメイクアップアーティストを招き、店頭で女性用化粧品「PIXY」の化粧方法などを実践している。
 さらに、2013年1月からは現地で生産した商品に限らず、日本からマンダム商品を輸入。所得の高い消費者への販売を開始した。着実に売上が伸びており、販売店を拡大中だ。

【足でキオス開拓 ロッテ・インドネシア】
 ロッテは1993年にインドネシアへ進出した。「キシリトール」などのガムや飴など次々に投入してきた。今年からは国内で「チョコパイ」の製造販売を開始し、インドネシアで奮闘中だ。伝統市場のキオス(小規模雑貨店)や露店を1軒ずつ回る草の根営業を実施する。

▼バイク部隊も発足
 2009年から営業社員がバイクに菓子類を積み、直接キオスへ出向く「バイク部隊」を編成した。首都圏のジャボデタベックと西ジャワ州の一部で約250人のバイク部隊が露店へ足を運ぶ。ジャカルタ特別州内に14カ所の営業所を設置し、各支店20人前後で業務をこなす。
 また、同時に中間流通業者に販売するバイク部隊も編成。キオスなどの露店と中間流通業者の両方向から営業をかける。

▼キオスの地図は自ら作成
 スーパーマーケットのようにキオスの場所は地図に載らないため、住居街を歩くなかで、新しく発見することがよくある。社員は外回りのなか、新しくキオスを見つけた場合、上司に報告し、営業先リストに追加する。以前まであった営業先がなくなっていることもあるため、営業マップは常に流動的だ。地道に外回りを続け、自ら営業先を増やしていく。
 リツキーさん(21)はバイク部隊で働き始めて1年。仕事と併用して夜間に専門学校へ通う。仕事ぶりは真面目で、6カ月連続で目標を達成中だ。
 朝礼が終わり、9時ごろに営業所を出発。1時間ほどかけて、営業先の南ジャカルタ・クバヨランラマへ。住宅が密集しているなか、バイクで小道をすり抜け、営業先のキオスに着いた。ロッテのガムが店頭に並ぶ「お得意先」。あいさつを交わし、店主とも顔なじみの様子を見せる。新たな商品の納入もスムーズだ。

▼営業の鏡
 2軒目はさらに住宅街の奥へと進む。バイクですら通れない細い小道を徒歩で突き進むと、自宅で商売をするキオスがあった。しっかり外回りをしていないと、まず見つけられない場所だ。
 店番は奥さん。「夫が財布のひもを握っているから私では判断できないわ」という。しばらくすると、夫が買い出しを終えて帰宅し、成約につながった。
 この日はリーダーのトゥリさん(33)らと同行したこともあり、スムーズな営業で午前中に立ち寄った8軒全て成約した。
 トゥリさんはロッテで働き始めて3年。ビスケットの会社で営業を経験後、契約社員としてロッテに転職した。勤務当初は、キオスで「ロッテです」と言うと、「ショッピングモールがうちに何の用なの」と、同社の菓子類の認知度は低かったという。最近では、徐々に手応えを感じている。「店主が留守だからといって、何もせず帰ってきてはだめ。お客様のために来ましたという証を残さないと」と、他の社員にとって、営業の鏡となっている。

▼お小遣いは千ルピア
 なかには卸売業者など大口取引先に数軒だけまわり、楽をする社員がいるが、商品の普及につながらないため禁じている。「結局、卸売業者内で商品が止まってしまう」ため、消費者に届かないからだ。上司は定期的に面談して営業先リストの進捗状況を確認する。
 ガムなどお菓子の購入者は子どもたちだ。子どもたちは親からもらった千〜2千ルピア(約10〜20円)の小遣いを握りしめワルンへ買い物に来る。ロッテはキシリトールを3粒千ルピアで、チューイングガムを5粒1500ルピア(約15円)で販売する。お小遣いで購入できる金額の範囲内で販売する。新発売のチョコパイは1個2千ルピアと子どもにとっては少し高めだが、人気は急上昇。営業所に在庫はなかった。(佐藤拓也、写真も)


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