徴税拡大、汚職抑制 財政強化へ改革案 税務職員に月給700万ルピア
ジョコウィ次期大統領の政権移行チームが国家予算改正案の準備を進めるなか、各所から財政改革案が出ている。税務職員の待遇改善や土地建物税徴税の移管、税金の使途への監視強化などを通じ、新政権での財政機能強化の機運が高まっている。
近年税収は増えてきた。税務総局は一時は「汚職の巣窟」と呼ばれたが、スリ・ムルヤニ財務相(2005〜10年)による改革以降、GDP成長率に歩調を合わせて伸びている。いまだに職員の収賄事件はあるが、「収賄する職員は1%に過ぎない」(フアド総局長)。
だが、過去最高となった14年の税収でも、GDP比は12・32%と依然として低水準。近隣のマレーシア、シンガポール、タイも同様の水準だが、「金持ちクラブ」のOECD(経済協力開発機構)平均は34・5%。OECDの65年平均の25・4%にも及ばず、徴税はまだ発展途上だ。富裕層、法人からの徴税に大きな可能性が横たわる。
税務総局は今月、職員5千人を独自に雇用すると発表。初任給700万ルピアは国営企業に匹敵する。ジョコウィ氏の政権移行チームは税務総局を財務省から分離する案を検討している。
土地建物税は地方税・地方徴税法(09年)により、13年末までに地方に移管が求められた。これが、ジャカルタ特別州が13年歳入を49兆ルピアから14年に72兆ルピアまで増やす一要因になる。だが、アホック副知事は「歳入は160兆まで増やせるが、現状は72兆ルピアにとどまっている」と指摘。徴税について、アジア開発銀(ADB)と協力を進める。
だが、税務総局のハルトヨ氏は日刊紙コンパス20日付で土地建物税の徴税移管は困難に直面しているとの考えを示した。税務総局は講習会などで教えてきたが、多くの自治体は徴税法、情報技術(IT)の使い方に問題を抱えている。
一方で、税金の使途を改善する議論も進んでいる。国家開発計画庁(バペナス)の経済・開発金融担当審議官、バンバン・プリジャムボド氏や有識者は日刊紙インベスターデイリーに対し、地方の予算執行を厳格化するため「賞罰(リワード・パニッシュメント)」制度を導入することを提案した。効率的な予算執行には賞を、汚職などには罰を科す枠組みだ。
地方自治体では汚職がまん延している。内務省によると、05〜14年の間、予算審議をする地方議会議員3169人、地方公務員1221人が関与した汚職事件があった。14年5月の段階で、325の正副首長が汚職事件の容疑者、被告になった。
15年予算は地方交付税交付金639兆ルピアを計上。予算の32%を占める。今年施行の村落法で、県市を通らずに村落に落ちる補助金が増す見通しだ。米コンサル・ATカーニーによる調査では、政府は調達で毎年40億ドルの損失を出しており、3万2千校の40年間分の運営費、公共事業予算の20%にあたるとしている。 (吉田拓史)