新イ日本大使に谷崎氏 オールラウンドの行動派 外務省研修所長 欧州局長など歴任 9月中旬にも赴任 オールジャパンで インドネシア外交を

 日本政府は5日、次期駐インドネシア大使に谷崎泰明外務省研修所長(62)を任命し同日午後、皇居で認証式が行われた。ジャカルタ赴任は9月中旬過ぎの見込み。外務省は欧州担当、経済協力、官房総務など幅広く担当したオールラウンド・プレイヤーの行動派として知られている。同日夕本紙の取材に「インドネシアは日本にとり重要性がますます高まる東南アジア諸国連合(ASEAN)の核。在留邦人の皆様と手を携え両国関係の発展に尽くしたい」と抱負を述べた。

 新大使はまず「ASEANは長期的に見てインドネシアとベトナムが核となり協力して地域の安定を図ることになると思う。ただ客観的に見てベトナムは国家作りに多少時間がかかるので、インドネシアの役割は大きくならざるをえない」と述べ、東南アジアにおけるインドネシアの重要性をも念頭にインドネシア外交に取り組む考えを示した。
 インドネシアとの仕事上のつながりについては「20年ほど前の有償資金協力課長時代もインドネシアは日本の経済援助政策の中で最も重要な国だった。非常にしっかりしたBAPPENAS(国家開発企画庁=当時の日本の大蔵省と経済企画庁の機能を併せ持った国家経済運営の中核組織)と組んで(インドネシア経済発展に向け)仕事をしていた」と回想、両国の関係発展に今度は大使として取り組む強い意欲を伺わせた。
 個別案件に関しては「ジャカルタの地下鉄をBOT方式(民間事業者がプロジェクトを建設、運営し、資金回収後に現地側に譲渡する)で進めようとしたがうまくいかず、現在の交通渋滞につながってしまった」と回想しつつ「いまからでも決して遅くない。パスモなども含めて地下鉄運営で日本が持つ様々なソフトも投入して、プロジェクトをぜひ成功させたい」と強調した。
 また、「(政府が主導し民間が従うというニュアンスがある)官民という言葉はあまり好きではない。ベトナムでも実践してきたことだが、インドネシアとの外交も政府と民間が手を組むオールジャパンでやっていきたい」とした上で「これから十分な仕事をするには、変化しているインドネシアについて相当の勉強が必要だと思っている。現地在留邦人の皆様にいろいろ教えていただきたく願っている。大使室のドアはいつもオープンにしておきたい」と邦人社会と密接な協力関係の構築を目指していることを示唆した。
 また新大使は最後に「仕事を進めるにはまず土俵を作りたい。その上にプロジェクトを構築していきたいと思う。誰もが分かりやすい絵をキャンバスを描く必要があると思っています」と述べ、仕事の進め方のイメージをも示した。(東京で、編集委員 小牧利寿)

◇谷崎泰明(たにざき やすあき)
 1951年10月20日生まれ。62歳。東京都出身。東大法学部から1975年に外務省入り。語学はドイツ語。経済協力問題や総務分野を経てアジア局南西アジア課長、経済協力局有償資金協力課長、欧亜局西欧第一課長など幅広く歴任した。1998年に在ドイツ日本大使館公使。2001年に外務省全体を統括する大臣官房総務課長に就任、その後、領事局長、欧州局長を歴任し、2010年にベトナム大使、2013年から研修所長を務めていた。

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