道路課金制度を導入 首都の渋滞緩和スナヤンで試験 40カ所にゲート設置へ
首都の渋滞緩和を目指し、電子課金システム(ERP)の試験運用が始まった。スディルマン通り南端スナヤンのロータリーに試験器を設置。ジャカルタ特別州政府は来年の正式導入までに主要道の約40カ所にERPを設置する方針だ。
州政府は先月15日、運輸省の公用車2台に車載器(OBU)を設置し、ERPゲートを通過する実験を開始した。ゲートは中央ジャカルタ・スディルマン通りにあるパニン銀行前(ロッテマート隣)に設置し、9月までの約3カ月間試験運用する。スウェーデンのカプシュ社製を使用し、ゲートの高さ14メートル、幅7メートル。約100メートル手前から上部のカメラ3台のセンサーで車体を感知し、通過時にフロントガラスに取り付けた車載器のチャージ(入金)済みのカードから料金を徴収する。
同州交通局のムハンマド・アクバル局長は、試験中は通過料金を無料にし、車載器とERPのデータ送受信や渋滞緩和を測定すると説明。試験用の車載器は2台を運輸省の公用車に設置。一般の車載器は一台20万ルピアほどで販売する予定だという。
同局長は州内の車両に限らず、通過する全車両から料金を徴収すると強調。チャージ不足や車載器の未搭載などの理由で通過料金を支払えなかった場合、ブザー音が鳴りカメラがナンバープレートを撮影、警察にデータを送信する。住所を免許証と照合して運転手を特定し、請求書を送付する。違反した運転手は警視庁車両登録局(SAMSAT)に罰金を支払う。
アホック知事代行は「(スナヤンの同所は)1時間に1500台以上の車両が通行しているが、課金システム導入後は公共交通機関の利用者が増えるだろう」と期待する。通過料金は1台につき2万〜4万ルピアで、通行量や時間帯、曜日などで金額を変える計画。比較的高額な利用料を設定することで通行量を減らしたい考え。公共交通機関の利用者を増やすため、州政府は2階建てバス50台を輸入する予定だ。
ジャカルタ都市交通評議会(DTKJ)のアフマッド・イズル・ワロ事務局長は「スウェーデンでは渋滞が25%緩和したが、失敗例から運用方法を検討することも必要」と指摘。破損道路の修繕費などで膨らむ経済負担をERPの徴収金で賄うよう呼びかけた。
ERPの徴収金は年間約7兆ルピアを見込んでおり、うち1兆ルピアを利用者への補助金に充てるという。また車両税は昨年4兆6000億ルピアで、今年は6兆ルピアを見込んでいる。
■ナンバー認識に課題
試験運用で不具合も出ている。通行料が払えない場合、違反車のナンバーをカメラで撮影する仕組みだが、ナンバーを認識できないという。カプシュ社の現地法人アリタ・プラヤ・ミトラのニア・ジャンファ氏は「欧州向けに開発されたシステムでは国内のナンバー認識が難しい」と指摘する。
インドネシアのナンバープレートは曲がっているものやシールがついているものなどがあり、読み取りが難しいため、ナンバー読み取りシステムの改善を急いでいる。また、欧州に比べて激しい雨や雷などが発生するため、ERPの整備・維持に、通常より多額の費用がかかるとしている。
州政府は3〜6カ月後を目安に中央ジャカルタ・タムリン通り、メダン・ムルデカ通り(モナス周辺)、西ジャカルタのハヤム・ウルック通り、ガジャマダ通り、南ジャカルタのワルン・ブンチット・ラヤ通り、マンパン・プラパタン周辺などにカプシュ社のERPを設置。南ジャカルタ・クニンガンのラスナサイド通りにノルウェーQフリー社のERPを設置し、両社の機材を試験して入札を実施する。(西村百合恵、写真も)