銀行法改正案、懸念の声 外銀の現法化 出資上限40% 国会「遅くとも9月末成立」
昨年から議論が続いている銀行法改正で、最新の法案では外国銀行に対し、?現地法人化、?出資上限は40%に厳格化、などの条項が盛り込まれていることが分かった。銀行投資に関する国際的交渉の条項には「レシプロシティー(互恵主義)原則」を明記しているにもかかわらず、「外銀規制は矛盾しており、法の不確実性につながる」との指摘もある。国会関連委員会は、現職議員らの任期が切れる9月末までに可決成立させたい意向だ。
英字紙ジャカルタポストによると、見直しが進められてきた法案の最新版では、法人形態をインドネシアの株式会社(PT)にするよう義務づけ。海外での金融危機から国内銀行業を保護する目的とされている。
また海外の本店(本社)による、インドネシア法人からの資金引き出しも認めないとしている。
国内には三菱東京UFJ銀、米国のシティバンクやJPモルガンチェース、ドイツ銀、英国のHSBCやスタンダードチャータード銀など、支店ステータスで営業している外銀がある。
法案では「支店ステータスの外銀は、可決・成立から5年以内にこの法律に準じなくてはならない」と記されている。
現法化については、審議を続けてきた国会第11委員会(金融、銀行、開発計画担当)が昨年、外銀に対する公聴会で説明しており、関係者からは改定案を懸念する声が上がっていた。
第30条では、出資上限40%(現行は99%)への強化を明記。多くの外国投資家が国内銀行の支配株主に居座るのを回避する狙いだ。
関連する第63条では支配株主を規定し、金融庁(OJK)が実施する適性テストの合格を義務づけ。不合格者に対しては、株保有を認めないとしている。
第11委のアジス副委員長は、法案は遡及(そきゅう)適用ではないので、外国投資家による現行投資には影響しないと説明している。
出資規制強化を巡っては昨年、シンガポールDBSグループによるダナモン銀株67.4%買収合意に対し、インドネシア中銀が40%までしか認めない措置を取り、シンガポールと対立。逆に、同国で営業拡大を目指す国営マンディリ銀など3行の戦略を阻む問題となった。
インドネシア外銀協会(FBAI)のヨセフ・アブラハム会長(豪系ANZインドネシア銀頭取)は、国際的な自己資本比率規制バーゼル3に照らしても、40%規制は非経済的な問題だと批判。「インドネシア自身が魅力的(な市場)にならなくてはならない」と指摘する。
■日本金融庁と覚書
ムリアマンOJK長官はこのほど、外国投資家がインドネシア国内銀行の支配株主であるためには、本国の金融機関とOJKが認可協力に関する覚書を締結することが条件だと述べた。
今後、未締結の場合には支配株主である認可を出さないとしている。
長官によるとOJKはこのほど、日本の金融庁と覚書を締結。韓国の金融当局とも互恵原則に基づき、データ交換などで詰めの交渉に入っている。
マレーシア中央銀行、シンガポール通貨庁(MAS)との提携も検討しており、アラブ首長国連邦(UAE)とも交渉を進めている。年内の締結実現を目指している。(前山つよし)