わくわくするラマダン 家族と過ごす大切な時期

 ラマダン(断食月)入りから1週間。2億人を超すムスリムが暮らすインドネシアでは一大行事だ。会社勤めを続けながら、家族と共に過ごす時間を大切にする季節でもある。南ジャカルタ・マンパンに家族4人で暮らすシンティア・フェブリアナさん(27)に話を聞いた。

 シンティアさんは中央ジャカルタ・スディルマン通りにある会社に勤務。普段は朝5時半に起床して6時半に出勤するが、ラマダン期間中は3時起床。3時半から4時半の間に「サフール」と呼ばれる断食前の朝食をとる。食事を終えるともう一眠りし、6時に起きて7時に出勤する。
 ムスリムでない人には断食はつらいものに見えるが、ムスリムにとって必ずしもそうではないようだ。シンティアさんは「ラマダンが近づいてくるとわくわくするし、幸せな気分になる」と話す。「ラマダン中は会社周辺に露店がたくさん出るので、会社帰りに何を買おうかとても楽しみ」という。断食よりも日中の眠気とたたかって仕事をきちんとこなすことの方が大変だという。
 インドネシアでラマダンを始めるのは小学校低学年が一般的。シンティアさんは8歳からラマダンを始めた。両親に促されたのがきっかけだった。最初の年は日の出から正午まで断食。昼食をとった後、6時ごろまで再度断食することから始めたという。
 最初から1カ月間の断食をする子もいるが、家庭や子どもによってさまざまだ。低学年では半分くらいの同級生がプアサを始めていたという。初めて断食した日は昼過ぎに帰宅し、のどがからからで我慢できず、冷凍庫の扉を開けて顔を冷やすことで我慢した。母親と兄に笑われたのを今でも覚えているという。
 シンティアさん家族は日の出前のお祈りと朝食、日没後の夕食を家族全員で共にする。「毎日忙しい英語教師の兄や家事に追われる母とも、ラマダン期間中はなるべく一緒に食事をとるなどして、普段より多くの時間を一緒に過ごしたい」。ラマダンを通して「ムスリムとして精神的に成長したい」とシンティアさんは語った。
 1カ月のラマダンを終えて迎えるレバラン(断食月明け大祭)には、家族そろってジャカルタ郊外に暮らす親戚を訪問し、ラマダンの成功を祝い、親族間の親睦を図る予定だ。(藤本迅、写真も)

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