【特集】東ジャワ州大統領選挙情勢(上)キアイの支持争奪戦 票田揺さぶる中傷タブロイド

 東ジャワ州の大統領選挙でジョコウィ候補を誹謗中傷するタブロイドが配付された。背景は何か、選挙戦の実態は。プサントレン(イスラム寄宿学校)を訪ねて取材すると、キアイの支持争奪戦が浮かび上がってきた。東ジャワ州の政治模様から同じような複雑な選挙戦が、他の全34州でも起きていると推測できる。 (東ジャワ州で、吉田拓史、写真も)

 今月4日のキャンペーン初日。カラ副大統領候補の最初の一手はキアイとの会合だった。国内最大のイスラム団体「ナフダトゥール・ウラマー(NU)」のハシム・ムザディ元議長と元議長を慕うキアイ300人がジャカルタのホテルに結集。駆けつけたカラ副大統領候補に対し、ハシム元議長は「友情を結ぶのが遅すぎた。先月すでに支持を決めていたのだから」。
 イスラム知識人は地域の名士。キアイが指導すれば、尊敬する人々はそろって支持を決めると言われる。両陣営がこの支持を競った結果、最大勢力のNUは二つに割れた。サイド現議長はプラボウォ支持、NUを母体にする民族覚醒党(PKB)のアジズ最高顧問はジョコウィ支持。両陣営はジャワの農村で、キアイの支持を取り付けるオセロゲームを闘っている。

▼プサントレン名門高
 スラバヤから約70キロ西のジョンバン県。サトウキビ畑が広がる田舎町はNUの発祥地で、国内有数のプサントレン集中地帯だ。
 同県「三大プサントレン」のひとつ「ダルルウルム」。小・中・高・高専に全国から集まった学生8700人が集うマンモス校だ。1885年開校の名門高は、祈りの時間になれば周辺の人々が校内のモスクに吸い込まれ、周囲が閑散としてしまう。宗教教育のみではなく、語学教育や留学団体との協力を通じた国際的な人材の輩出をうたっており、中間層以上の子どもが英才教育を積む場という側面もありそうだ。
 この平穏な環境に、ある日、タブロイド紙「オボールラクヤット(人々の灯火)」が配られた。内容はジョコウィ氏を非難、一部は誹謗中傷するものだった。記者が入手した第2版までを要約すると「ジョコウィは華人の子どもであり、多数の大物華人チュコン(政商)が裏につく。闘争民主党(PDIP)の執行部には5人のキリスト教徒が入り、国会議員候補185人が非ムスリムであり、十字架の党である」。それから「メガワティ氏の操り人形」との表現で政権担当時に混乱を起こしたメガワティ氏への悪感情をあおる。同校のキアイ、コリル氏は「あれはどこから来たのかはわからない。郵便局から送り主が無記名できた。二回目も誰かが運んできたが、その者が誰かは分からない」。
 コリル氏は「雑誌のジャーナリズムの部分は確かだ。一方だけにそれを向けるならば、単なる誹謗中傷になる」。ソーシャルメディアで流布した「ジョコウィ氏は少数派のシーアやキリスト教徒から宗教相を選ぶ」といううわさは一蹴した。「単なるうわさについて何も言えない。物事を決める段になれば、まとまるべきところにまとまると見ている」。NUから宗教相を出すと言うことだ。

▼「支持胸に秘める」
 ジョンバン県にある三大プサントレンのもう一つ「バフルルウルム」のキアイのイルファン氏は「そういうタブロイド紙は見たことがない」と否定。「華人の子ども。そんなことが問題なのか。ジャワでは華人が混ざり合って生きてきた」と話した。「NUはさまざまな意見を持つイスラム知識人の集まり。それぞれの考えがある。だから支持が割れる」。キアイのなかにはその支持を胸に秘める人もいる。「私がどちらを支持するのかは、神のみぞ知るだ」
 「中東のイスラムとインドネシアのイスラムは違うんだ」と強調した。この日の夜は信者とともに、読経「タフリラン」を始めた。これはジャワ島の伝統が色濃い儀式だ。
  ▽     ▽
 実はいくつかのプサントレンに取材を断られた。中傷問題をどう扱うかで自身の政治的方向性、支持がむき出しになるからだろう。記者はタブロイドが喧伝する内容は、たとえ真偽がどうであろうとも、一部では「事実」と捉えられている側面もあるかの印象を受けた。

【キーワード】
▽キアイ イスラム知識人。尊敬する信者を持ち、大半は農村部でプサントレンを運営。地域の名士であり、中には敬けんなムスリムに大きな影響力を持つ人物もいる。
▽プサントレン イスラム寄宿学校。礼拝、クルアーン(コーラン)など聖典の学習が組み入れられ、完全な男女分校。教育内容は近代化が進んでいる。

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