自動車産業の在り方題材に アズハル大日本研究センター 学生と活発な質疑

 南ジャカルタのアル・アズハル大学文学部日本研究センターで20日、特別講義「チャレンジ! 日本に学ぶ」が開かれた。トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)の野波雅裕社長が講師を務め、トヨタの事業戦略などを解説したほか、質疑応答では自動車産業の在り方について学生たちと活発な議論も交わした。
 野波社長は「トヨタのインドネシアにおける取り組み」をテーマに講演し、まず自動車産業の全体像や世界中に展開しているトヨタの企業概要を解説。その上でインドネシア国内でのトヨタの取り組みを話し、販売、生産の両部門で計9千人の従業員が働いていることや、13人の取締役のうち8人がインドネシア人であることなどを紹介した。
 国内でのトヨタの販売台数は2009年から順調に伸びており、13年には43万台を突破。インドネシアで販売されている90%が国内で生産されている事実なども挙げ、西ジャワ州カラワンの工場で働くインドネシア人技術者のビデオを見せながら、「彼らの自動車生産にかける熱意を感じてほしい」と呼びかけた。
 講演後の質疑応答で、野波社長は学生たちの質問に丁寧な口調で答えた。創業者・豊田喜一郎氏の「現地現物主義」に関心があるという女子学生の問いには「私自身も毎日実践している」と強調。社内で階段を踏み外して傷を負った女性社員から直接、事情を聞き取ったエピソードなどを例に出し、「ただちに現場に行かないと問題は解決しない」と話し、学生たちの注目を集めた。
 またジャカルタの交通渋滞が深刻化している点について、自動車メーカーの責任をどうとらえているかという女子学生の問いには、「自動車産業はその国の発展に非常に重要であり、幅広い層に雇用の機会を与える」とした上で、「ただし物事にはいい面と悪い面がある。車が増えれば渋滞や排気ガスはひどくなるし、交通事故も起きる」と問題を正面から受け止めた。
 この発言に続き、野波社長は「日本も30年前には事故での死者数が年間2万人に上っていた。だがその後、国民と政府、企業の努力で年間5千人にまで減らすことができた。インドネシアでもそうなるように支援していきたい」と話し、焦点となった自動車産業の在り方については、「(自動車産業を縮小し)失業者を増やすのがよいのか、政府に道路を整備するように働きかけるべきなのか。その点は、皆さんのような若い人たちにこそ、よく考えてほしい」と訴えた。
 一方で、「トヨタに入社するにはどうしたらよいですか」という男子学生の率直な質問には「まず、しっかり学問に励み充実した学生生活を送ってほしい。我々もそうした学生に選んでもらえるような企業を目指す」とにこやかに回答した。
 特別講義は、同大文学部日本文学研究学科の高殿良博教授らが企画した連続講演会で、今回12回目となった。(新谷敏章、写真も)

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