16空港、津波危険域に 専門家ら、開発計画に警鐘
東北大学・災害科学国際研究所のアブドル・ムハリ研究員は15日、ジャカルタで地元メディアに対し、国内の16空港が沿岸から0〜800メートル内に位置し、津波被害を被りやすく、対策が不十分だと指摘した。ほかの防災専門家も、空港など国内の重要施設建設においては、自然災害の危険性に対する考慮がなされていないと声をそろえる。
沿岸付近にあるのは、バリ島ングラライ空港とフローレス島のエンデ空港で、距離は0メートル。マルク州アンボンのパティムラ空港が海岸から50メートル、西スマトラ州パダンのミナンカバウ国際空港が500メートル、北スマトラ州ニアス島ビナカ空港が800メートルなど。
パダンやバリは、二つのプレートが沈み込む位置にあり、地震と津波被害の可能性が高い。防波堤で対策を講じている空港もあるが、ムハリ研究員は「高さ5メートル以上の津波に耐えられる防波堤は一つもない」と指摘する。津波や地震を調査する科学技術応用評価庁(BPPT)沿岸力学研究所のラフマン・ヒダヤット所長は「災害リスクの軽減が、国家開発計画の主流にはまだなっていない」と批判。犠牲者発生や損失を軽減するため、あらゆる公共施設の建設予定地は災害のない安全地域に変更すべきだと主張している。
同研究所の調査では、新空港建設が予定されているジョクジャカルタ特別州クロンプロゴ県のグラガ海岸には、高さ9メートルの津波が襲う可能性があるとの結果が出ている。
全長115キロに及ぶ沿岸には新空港へのアクセス道路などのインフラ整備も計画されており「津波の危険性を十分に考慮すべきだ」と警鐘を鳴らしている。
ムハリ研究員はまた、空港のような主要公共施設が建設される場合、ホテルや住宅、商業施設などが周辺に建設される傾向を強調した。
例えば空港の場合、最低で半径2・5キロ圏内の経済活動が吸引される。
このため津波の防波堤を建設したとしても、防災効果は空港にしか及ばす、周辺住民の経済活動は災害対策が講じられていない地域にまで広がると指摘。2011年の東日本大震災後に、防災対策のために仙台空港周辺の施設が移転させられた例を挙げ、空港と地域経済活動のつながりも考慮するよう強調した。