100兆ルピアの効果 交通インフラ向上で MRT事業でジャカルタ 英コンサル発表
市民生活に悪影響を与えるジャカルタの渋滞問題。シンガポールで開催された世界都市サミット2014で2日、交通コンサルタントのクレド(英・ロンドン)は30年までにジャカルタの交通インフラが向上した場合、約100兆ルピア(89億ドル)の経済効果があるとの調査結果を発表した。渋滞削減に向け、昨年から始まった大量高速鉄道(MRT)敷設事業が解決策として効果があるとした。
報告書では世界各国35都市の交通インフラ状況を分析。昨年の各都市のピーク時通勤者数の推移、一人当たりの国内総生産(GDP)に占める交通費の割合や経済効果を示す。また、都市ごとの交通インフラの長短所や改善策を説明している。
GDPに占める交通費の割合が最も低いのがコペンハーゲンの8.6%、次いでマドリードの8.7%、シンガポールは8.9%。最も高いのがナイジェリアのラゴスで27.7%だった。
ジャカルタは23.5%(約780万ルピア)と高い。インドネシアの昨年のGDPは一人当たり3350万ルピアで、高額な交通費の支出が必要となっている。
交通インフラ向上に向け、▽利便性(運行本数や交通手段の多様化)を高め公共交通機関への移行を進める▽中長期的な都市交通インフラ計画の策定する―が必要と指摘している。クレドの担当者は、交通インフラが整っている都市の共通点として鉄道交通網が充実していることを挙げ、「ジャカルタのMRT事業は渋滞緩和に大きな効果がある」と後押しした。
ジャカルタ州政府が04年に開始したトランスジャカルタは、「効果は一時的で通勤者の代替手段になるのは困難だが、MRTとの連結性を高める点は評価できる」との見解を示した。
ジャカルタの渋滞による1日の損失額は1860億ルピアで、年間では68兆ルピアに上るという。さらに、州内のピーク時の通勤者数が30年には13年比100万人増の250万人に急上昇する見込みだ。
州内では現在、通勤者の交通手段としてオートバイ利用率が43%、自動車が12%と合わせて50%以上を占める。ジャカルタ州政府はMRT事業に注力し鉄道利用率を増やす狙いだ。工事は18年に完工する予定。
(小塩航大、写真も)