低価格住宅の補助廃止 土地の高度利用促す 集合住宅に転換へ
住宅国務相事務所が来年4月から、中・低所得者向けの住宅金融支援制度(FLPP)を改正することが22日までにわかった。これまで戸建て住宅を購入する際に政府から金融機関へ低利で資金供給していたが、対象を戸建てから政府が建設を進める集合住宅にする。都市化が進むインドネシアで、住宅の高層化を進め、土地の高度利用を促進させようとする狙いだ。
2015年3月末にFLPPを改正する。対象になる集合住宅の上限価格は地域ごとに異なり、最も安いのが中部スラウェシ州で2億4840万ルピア(1平方メートル当たり690万ルピア)、最も高いのがパプア州で5億6520万ルピア(同1570万ルピア)になる。現在は戸建て住宅にのみ適用され、最も安いランプン州で1億1300万ルピア、最も高額なのがパプア州で1億8500万ルピアが上限に定められている。
住宅国務相事務所のスリ・ハルトヨ住宅費用副課長によると、戸建てから集合住宅への転換は都心部の土地不足により、需要と供給のバランスが崩れ、低所得者向け住宅の価格が高騰しているという。特に首都圏では近年、低価格住宅の価格上昇が顕著で、13年第4四半期は前年比で15.34%増加。政府の試算では住宅が1500万戸不足しているという。
同制度は低所得者向けの住宅ローンを民間に促すために10年に始まった。10年〜14年までに計135万件を目標にしていたが、毎年多くとも10万戸程度しか建設されていない。FLPP対象物件の価格上限が低すぎるなど、近年の住宅価格の高騰と釣り合わないとの批判から、政府は上限価格を引き上げるなど対処してきた。
一方でインドネシア不動産開発協会(アペルシ)など業界団体は補助制度の変更に反発を強めている。
アペルシは戸建てを扱う不動産企業が集まっており、エディ・ガネフォ会長は「約90%の会員企業が影響を受ける」と主張している。また廉価な集合住宅の価格は2億ルピア以上になるために、低所得者が購入するのは難しいことからも「解決策にはならない」と指摘している。
インドネシア不動産協会(REI)も投機目的の購入が増えるだけで低所得者層の支援にはならないとして、改正の取り消しを求めている。(高橋佳久)
住宅金融支援制度(FLPP)2010年10月から導入された政府から金融機関向けの低金利の資金供給プログラム。04年からは利用者への頭金や金利補助の制度があったが、低所得者向けの住宅供給拡大のため、住宅ローンの資金供給として始まった。最長償還期間は20年で、7.25%の固定金利。各銀行の最優遇金利よりも低利になっている。