土地建物税、首都で2倍超 住宅価格の上昇を心配 住民批判「急すぎる」
ジャカルタ特別州が1月から土地建物税(PBB)の指標となる課税評価額(NJOP)を引き上げたが、告知は昨年12月、地域によって2倍以上上昇し、住民から「上げる時期が急すぎる」「上げ幅が大きい」の批判が相次いでいる。専門家も急激な上昇は郊外への人の流出や不動産価格の高騰を招くと予測。ジョコウィ知事は理解を求めている。
中央ジャカルタのガンビルは1平方メートル当たり660万ルピアの評価額が1560万ルピアに、南ジャカルタのクバヨラン・バルは同じく660万ルピアが1350万ルピアに上昇する。ジョコウィ知事はPBBを税収の最重要項目と位置づけ、2014年の収入を昨年の3兆6800億ルピアから6兆5〜7千億ルピアを見込む。
NJOPは4年間引き上げられていないことが問題視されており、ジョコウィ知事は今月初め、「市場価格と比べるとまだ安いぐらいだ」と地元記者に述べた。アホック副知事もNJOPの引き上げで、富裕層から多く税金を取るシステムになったとし、適正価格と説明。2億ルピア以下の評価額の家では実効税率が0.01%しか課されないため「もし評価額が高く、支払えないならば、家を売り、アパートなどに住むか、郊外に家を買うべきだ」と話した。
■都市計画との整合を
約150%上昇した中央ジャカルタの高級住宅街メンテンでは、56世帯が抗議する署名をした。住民の大半はすでに定年退職している人で現在は貯金や年金で生活している。
メンテンに住むイスマイルさんは3月、昨年に比べ、倍額の請求書を受け取った。「値上げはしょうがないが、いくら何でも急すぎる。少し準備する時間がほしい」と訴える。現在の住居は80歳を超える父親の所有だが、現在はイスマイルさん夫婦の収入でやりくりしている。「このまま値上がりすれば、家の一部を売るか、別の場所への引っ越しも考えなければいけない」と不安視する。
インドネシア政府はメンテンをオランダ統治時代の建造物の保存地区と指定しているが、住人は所得に比べ高額の税金に苦慮する。ルジャック都市計画センターのマルコ・クスマウィジャヤ氏は「現状のままでは文化遺産に指定されている家すべてが、超富裕層の家に建て替えられてしまう。現状の都市計画との整合を考慮するべき」と税控除を提案している。
首都周辺の住宅価格の上昇も予想される。米系不動産コンサルタントのジョーンズ・ラング・ラサール・インドネシアのアントン・シトルス社長は「郊外への人の移動が増え、不動産会社も価格をつり上げるだろう」と急激な評価額上昇は実勢価格も上昇させるので、差を埋めることにはならないと指摘した。(高橋佳久)