災害ラジオ局を支援 シナブン山で情報発信 神戸のFMわいわい
多言語放送のコミュニティーラジオ局「FMわいわい」(神戸市長田区)はこのほど、北スマトラ州カロ県のシナブン山のバトゥカラン村とプルトゥグヘン村で緊急災害ラジオ局2局の開設支援を開始した。住民主体で災害情報を発信し、地域に根付いたラジオ局作りを目指す。
開設事業では災害支援の国際NGO「ジャパン・プラットフォーム」と約500万円の予算を組み、2カ月間で実施する計画だ。
ラジオ局を運営し、災害情報を発信するのは住民たちだ。シナブン山の川沿いの村に監視ポストを設置し、住民が無線で「生の災害情報」をラジオ局や役場に伝える仕組みを作る。番組制作や機材操作も住民が担い、NGOとともに運営手法や番組制作ノウハウのトレーニングを実施する。被災者にラジオ受信機計千台を配布する予定で、23日には500台がカロ県政府に届けられた。
FMわいわいの日比野純一代表理事は「ラジオを通じて住民の災害対応が迅速になるだけでなく、防災教育にも活用できる。住民の手で持続的な災害に強い村づくりを進める」と力を込める。
日比野さんはインドネシアで支援する地元NGOメンバーと被災地を視察。ラジオ局開設にあたりカロ県政府や住民と話し合いの場を設けた。「彼らの生活は災害と隣り合わせだ。地域での災害メディア設置にとても共感してくれた。住民が主体的に参加する意欲は高い」と話す。
シナブン山は先月、火砕流が発生し住民16人が死亡するなど現在も活発な火山活動を繰り返す。火山地質災害対策局(PVMBG)は昨年11月以来、警戒レベルを最高のアワス(避難準備)に設定。現在も1万5千人が避難生活を送る。
災害対策本部は行政中心で、最新の災害情報が避難民に伝わるまで時間がかかる。早急な情報発信媒体が必要で、土石流など二次災害が起こる可能性も高い状況だという。
FMわいわいは1995年の阪神淡路大震災で在留外国人向けの災害情報提供をきっかけに誕生した。11年から国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業で、ジョクジャカルタのムラピ山山ろくのラジオ局運営を支援している。(小塩航大)