物流競争力に懸念 休眠路線復活急ぐ 来年の経済共同体控え

 2015年末から予定される東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)を前に、国内物流企業の競争力不足に懸念が広がっている。政府はオランダ統治時代に使われていた休眠路線を復活させるなど、インフラ整備を急ぐ。

 「インドネシアの物流企業は海外勢の買収攻勢にさらされる可能性がある」。物流協会のザルディ・マシタ会長はこのほど、ASEAN内で投資が自由化された後の国内物流業界の生き残りに強い懸念を示した。
 ザルディ会長は理由について①人材の不足②情報通信インフラの不足―を挙げた。シンガポールやマレーシアはこれらが十分整っているという。
 協会によるとインドネシアには大小2千の物流会社がある。ほとんどの会社が国外に目を向けず、国内事業に集中していたり、1品目の輸送のみしか取り扱っていなかったりする。システムの整備が遅れていてコストも高いという。
 ザルディ会長は「国内の大企業でさえASEAN市場統合の準備ができていない」と明かす。
 こうした国際競争に参加してこなかった「時代遅れ」の企業はノウハウを持った海外勢の脅威にさらされている。
 インフラ不足による物流の弱さが海外投資の阻害要因になる構造も変わっていない。世銀が19日に公表した物流の競争力を示す物流パフォーマンス指数ではインドネシアは160カ国中53位。ASEANで調査対象になった9カ国中ではシンガポール(総合5位)やマレーシア(同25位)などに次ぐ5位だ。
 国内総生産(GDP)に占める物流コストの比率は23.6%で米国(9.90%)、日本(10.60%)、韓国(16.30%)と比べて大幅に高い。物流・運送業者協会のイスカンダル会長は、「貧弱なインフラが物流コストを高くしている。港や空港の利用費用も上昇傾向にある」と早急なインフラ整備を求めた。
 大規模なインフラプロジェクトでは、4月からジャカルタ〜東ジャワ州スラバヤ間のジャワ北岸鉄道(全長727キロ)の複線が開通。港湾では北ジャカルタに国内最大となる予定のカリバル港をはじめ、各島の主要港も設備を増やすなどインフラ整備を急いでいる。

■線路2千キロ改修
 政府はオランダ統治時代に作られ、現在は未使用の鉄道路線の改修を進めている。ジャワ島とスマトラ島にある未使用線路を復活させれば物流の大幅な効率化が期待できる。未使用線路は両島で2千キロに上り、補修には4兆ルピアかかる見込み。
 日刊紙コランテンポによると、政府はこのほど、これまで使われていなかった西ジャワ州ボゴール〜同スカブミ線を稼働させた。今後、他路線も補修して順次稼働させていく。
 ザルディ会長は鉄道の復活により大幅なコスト削減が期待できると強調する。現在インドネシアでは物流の90%ほどがトラックでの輸送で、鉄道は1%以下。ジャカルタ〜スラバヤ間の鉄道輸送はトラックよりも30%ほど安い。将来は半分ほどを鉄道輸送にすべきとの見解を示した。(堀之内健史)

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