生徒たちは家族 JJS校長 岩本謙一郎さん
ジャカルタ日本人学校(JJS)校長の岩本謙一郎さん(59)は17日、3年間の任期を終え、帰国の途につく。「校長は管理職。自分で何か一つでも学校を変えることができないか」と模索し、走り続けた。
「私はよく動き回るマグロです」。着任直後、教員たちにあいさつした。「校長室にいるよりも、生徒との交流を深めるために校内を歩き回りたい」。生徒たちに気さくに声をかけ、学校生活の話に親身に耳を傾けた。
13日の卒業式では燕尾服を着て臨んだが、生徒からは「先生、マジシャンみたいだね」とからかわれた。「子どもたちに友達だと思われている」と教員たちは評価する。「私にとって生徒たちは家族のような存在です」。卒業式で生徒ら一人一人に「高校へ行っても頑張るんだぞ」と言葉を贈った。校長としてだけでなく、親心から自然と出てきた一言だった。
着任当時、教員の机の上に書類や本が積み上げられ、お互いの顔が見えなかった。「壁だらけの職員室の風通しを良くしたい」。本棚を机の下に移動し、パソコンの収納スペースも机ごとに設けた。「整理整頓は教員から。自ら実践すれば、子どもたちにもその大切さが伝わる」
小中学校の一貫校は初めて。「こんなに大規模な学校だとは思わなかった」と最初は戸惑ったが、「体育祭の応援合戦は迫力があり、JJSならではの感動があった。中学部の生徒が小学部の児童に応援の指導する姿は頼もしかった」。
さまざまな点で改善を試みた。「どうして中学部の授業は45分なのか」。日本では1科目50分。送迎バスの時間に合わせて設定されていたが、たとえ5分でも、積み重なれば日本の中学生と大きな差が出る。説明会を開いて保護者に理解してもらい、今年度から50分授業が始まった。
また、アルバム制作は保護者ではなく、業者に依頼することにした。「レンズをのぞいてではなく、たくさんの行事を直接目でみてほしかった」
4月から故郷の北海道に戻り、大空町立東藻琴中学校の校長に着任する。「JJSの子どもたちから素敵な思い出をもらった。3年間の経験を日本に持ち帰り、頑張りたい」。新たなる道へ、また一歩踏み出す。(山本康行、写真も)