スズ精錬を停止 国際価格下落受け バンカブリトゥン州の業者
膨大なスズの埋蔵が確認されているバンカブリトゥン州の精錬所で、国際価格の下落を受け、操業停止の動きが進んでいる。インドネシアは、世界のスズ輸出のうち40%を占める。日本にとって、スズの最大輸入国でもある。スズ採鉱会社では、出荷を削減する動きが進んでいる。
「現在の価格水準では、生産コストをまかなえない」。インドネシア・スズ鉱業協会のヒダヤット・アルサニ会長は7日、地元紙に対し、バンカブリトゥン州にある28の精錬所のうち、半数の14社のスズ精錬業者が操業を停止していることを明らかにした。
スズの国際相場価格は2万4300ドルと高水準にあった2月時点から、6月には1万9200ドルと、約20%ほど下落。国営スズ採鉱会社ティマ社は7日、長期契約に基づかない売買を行うスポット市場での販売を停止した。スポット販売は、同社の生産高の30%―40%の割合を占める。あるトレーダーは「ティマ社から毎月の割り当てがあるが、今月は販売がまったく確認できていない」と明かす。
7日時点で、トミー・ウタマ社が生産を停止。DSジャヤ・アバディ社は、生産能力の6割程度で操業している。マレーシアのスズ会社コバ・ティン社は、関係会社との話し合いを続けている。
トミー・ウタマ社のジョハン・ムロド取締役は「買い手が、1トン2万3千ドルで買いたくないのであれば輸出しない」と話した。同社は昨年にも輸出を停止している。
ティマ社は昨年、ロンドン金属取引所(LME)での価格が1万7千ドルを下回った際に、供給を減らした。コバ・ティン社をはじめ、中小のスズ精錬業者と協力して出荷に制限をかけ、国際価格のさらなる下落を食い止めた。
精錬業者は、今回も生産減により価格の下落にある程度の歯止めがかかるとみている。
バハナ証券のアナリスト、レオナルド・ガヴァザ氏は「価格を維持しようという戦略だが、ティマの供給量を考えると、マーケットに与える影響は限定的だろう」と冷ややかだ。
国際スズ研究機関(ITRI)統計・市場研究部門のピーター・ケトゥル・マネジャーは「現時点では、誰も世界的にマクロ経済が好転する青写真を描けておらず、スズ消費の見通しもない。インドネシアの鉱業会社は、コストの中で輸送費や燃料費が高い比率を占める傾向にあり、高品質の鉱石の採掘が困難になってきている」と話した。