上陸後も身動きできず、枯れ葉の水滴すする 海中で朝まで手を取り合った 古川さん手記
14日にバリ島東沖で行方不明になり、17日に救出されたバリ在住のダイビングインストラクター、古川さおりさん(37)が18日、報道各社に救出までの75時間を明らかにした。奇跡の生還を果たした古川さんの手記を紹介する。
■天候急変、潮流、洗濯機のよう
昼過ぎのダイビング開始時は、メンバー全員の体調に問題はなく、天候は穏やかでした。浮上すると天候が一変しており、視界が悪くなっていました。
その後潮流が一変し、水面が洗濯機のように回り出し、全員固まって手やタンクとBCD(浮力調整器)を取り合った状態でぐるぐる回りました。
回転から抜け、流されながらもバリ島とレンボンガン島の地形や飛行機の経路、島のライトとコンパスで現在地はおおよそ分かっていました。島に近いときは泳ごうかと試みましたが、潮流が入り組んでおり難しく、途中から体力温存のために皆で固まっていました。
■ココナッツ飲み励まし合い
パニックする人もなく、皆さんとてもしっかりなさっていました。夜間に遠くで大きな船がいたときは、ゲスト陣全員がライトで救援シグナルを送ってくれました。
意識が飛びそうになったときは、周りのメンバーが励まして起こし合いました。ココナッツが流れてきたのを飲んだりしました。15日朝まで一緒に手を取り合ったり、はぐれないように工夫しました。
■ボート追い、強い潮流で離ればなれに
15日午前にペニダ島南側を通ったタグボートが今までで一番近かったので、近付きたかったのですが、全員で行くには無理がありました。私が出来る限りのダッシュで近づきましたが、潮流もあり追いつきませんでした。
高橋(祥子さん)を含めた他のメンバー全員はその際にはまだ元の場所にいたはずです。戻ろうとしましたが、私がいた場所とみんながいた場所で潮流の向きが違ったため戻れず、離れてしまいました。
15日の夕方前、泳いでヌサペニダ島の絶壁の一部岩場になっているところへ近づいてから、大波に助けられて足が届くところまで打ち寄せられました。
救援を頼みたかったのですが、目の前は激しい海、後ろは断崖絶壁で、身動きがとれなくなりました。
貯めた雨水や枯れ葉の水滴、ごみのペットボトルの中の水で渇きはしのぎました。ごみの発泡スチロールなどを巻いたり、岩かげで雨に濡れないようにしたりして保温していました。
■名前呼ばれ、ヘリから水とクッキー
17日夕方、いつもお世話になっている他社ダイブショップやボート会社のメンバーが、ボートから叫んで呼んでくれたので、意識がはっきり戻りました。
すごい大波で、とても泳いで波越えをできる状況ではなかったのですが、最初に一人のローカルの仲間が勇敢にもフィンをつけて岸まで泳いできてくれました。その後、ヘリから救援物資が投げられ、水とクッキーと口にしました。
陸に戻って、病院でバリで昔から大変お世話になっている在住の皆さんの涙を見た時に初めて状況が見えました。皆さまのお心、多大なるご協力に、言葉ではすべて言い表せられないほど深く感謝しております。
まだ捜索中の2人が心配で心配で昨夜も寝付けませんでした。全員が一刻も早く見つかることを祈っています。