出生証明書、無料化進む 戸籍法改正受け各地自治体 未取得の子ども全国で4割
各地の自治体が、学校教育など行政サービスを受けるために提出を求められる出生証明書を無料化し、未取得の子どもを減らす取り組みを進めている。住民登録証(KTP)などの書類発行を無料化した昨年11月の戸籍法改正を受けた措置。費用や煩雑な手続きなどのため申請を思いとどまる事例が減りそうだ。
「新生児は出生証明書を持って帰宅」|。東ジャワ州バニュワンギ県政府は先月末、県内全ての保健所や公私立病院の一部で、出産後数時間以内の出生証明書の無料発行を始めた。リアウ州ドゥマイ市や中部ジャワ州スラカルタ市(ソロ)など他自治体も先月下旬〜今月から書類を無料発行する。
東ジャワ州スラバヤも今月初旬以来、イスラムの教義で夫婦と認定されるが、婚姻届を提出していない事実婚(ニカ・シリ)をした両親の下で生まれた子どもへ出生証明書の発行を始めた。今まで発行に必要とされた結婚証明書がなくとも、結婚に立ち会った聖職者の証明書と父親の認知届けを提出すれば発行できる。
リンダ女性問題・児童保護担当国務相によると、全国に約8290万人いる18歳以下の子どものうち出生証明書を持っていないのは2700万人で、36%にのぼるとみられる。国が存在を把握していないそれらの子どもは、出生証明書を提示できないため教育や就職の機会が大きく狭められるだけでなく、人身売買などで搾取される危険性も増す。
それが浮き彫りになったのが、雇用主を殺害したとしてマレーシアで死刑宣告を受けた東ヌサトゥンガラ州出身のメード、ウィルフリダ・ソイク被告の事例だ。同被告は偽造パスポートで成人と偽って入国。マレーシアの病院が実施した骨年齢測定で初めて事件発生当時17歳の子どもと証明され、死刑を免れる可能性が強まった。ウィルフリダ被告を支援するNGO職員は「出生地の自治体が出生証明書を発行できさえすれば、救出がこれほど困難でなかったはず」と話す。
戸籍法は改正されたが、全ての自治体が無料化するにはまだ時間がかかりそうだ。子どもの権利向上に取り組む非政府組織(NGO)プラン・インドネシアによると、ジャカルタ特別州では必要書類の用意などで現在平均10万ルピアかかる。職員のシンギさんは「各自治体によって申請にかかる時間が違うなどの問題も残る。市民への周知に加え、政府へ業務改善を働きかける必要がある」と指摘した。(宮平麻里子)