【デジタル羅針盤】 大データが告げる未来
インターネット通販最大手のアマゾンが、注文を受ける前に商品を出荷する方法の特許を取得した。
まるで押し売りみたいに聞こえるが、アマゾンに蓄積した大量のデータを使い、顧客の嗜好を分析すれば、高い確率で顧客の注文行動を的中させられるようになることを見越したもののようだ。
インターネット普及前には考えられなかった大量のデータをビッグデータと呼び、これに基いた予測や分析がビジネスや科学などさまざまな分野で革命的な成果をあげると期待されている。
例えばヤフー・ジャパンは検索のデータに基いて昨年の参議院選挙の結果を予測した。政党ごとの議席数では誤差があったものの、自民・公明を合わせた与党議席数、民主などの野党議席数は選挙結果と完全に一致。マスメディアなどが行う調査よりも正確な予測だった。
商品・サービスの需要、株価や為替、気象、はてはギャンブルの結果まで、およそ将来を予測することが必要なあらゆる分野にビッグデータの応用が検討されている。ゲリラ豪雨や、円とルピアの最適な両替のタイミングを予測してくれるのなら助かるが、単純労働者のみならず、マーケティングやコンサルティングなどを行う頭脳労働者も不要になってしまうかもしれない。
本当に顧客がどのタイミングで、どの商品を注文するかが予測できるほどになれば、我々が自由意志で行っているはずの行動を、コンピューターに「予言」されてしまうようで恐ろしいとも感じるだろう。未来を知ることで不幸になるという神話や物語は多い。
もちろん現実には課題が多く、簡単に「予言」が実現するとは思えない。そもそもビッグデータは、統計学の基礎になるデータ量が増えただけで、それほどの成果をもたらさない一時的なブームだと指摘する声すらある。
経験や知識から将来を予測することは、人類の繁栄の源泉だ。コンピューターの力でその能力が拡大し、より多くの幸せを実現できればいいのだが。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)