バリで体外受精出産 結婚15年、元気な男の子授かる 石踊さん、ハリヨさん夫妻
バリ島デンパサールの病院で昨年10月、体外受精で生まれた、石踊千夏さん(39)とハリヨさん(34)の長男、荘達(そうた)君がすくすくと育っている。出生時は3千グラム。結婚15年の2人にとって初めての子どもだ。
「体外受精を何度やっても子どもができない夫婦もいる。私たちは初めての試みで生まれた。幸運だった」とデンパサールで語学学校を経営する石踊さんは話す。
夫婦は養子縁組を考えたこともあった。しかし親が外国籍だと難しいことが分かった。日本の病院で体外受精をしようと相談したこともあるが、準備期間に1年かかり、海外に住んでいては無理だと言われた。そんな時、知人の日本人女性がバリ・ロイヤル病院(BROS)の体外受精で子宝に恵まれたという話を聞いて決心した。
現在バリでは三つの病院で体外受精が行われている。石踊さんらが通ったBROSを訪ねた。待合室の壁にはここで生まれた赤ちゃんの写真がずらりと飾ってあった。双子や三つ子もいる。
日本で体外受精の技術を学んだというプトラ医師によると、BROSでは2010年に体外受精を開始。これまで約140人の患者から64人の子どもが誕生している。患者の8割はインドネシア人。残りは外国人。在住者だけでなく、香港、台湾、豪州からの患者もいる。
「子どものいない夫婦がほとんどだが、2人目をほしいができない人、産み分けを希望する人もいる」。BROSでは体外受精を美容整形と並ぶ特別医療サービスとし、海外からの患者を呼び込むメディカルツーリズムの柱としているそうだ。
石踊さんは病院の待合室で診察を待つ何組ものバリ人夫婦に会った。体外受精の費用は女性の年齢が35歳以下で一回4500万ルピア、それ以上だと5千万ルピア。経済的に豊かになったインドネシアで、子どもができない夫婦にとって今や体外受精は一つの選択肢になりつつあるのかもしれない。(北井香織、写真も)