降水量少なめ  対策に遅れ 監視データで対策を 洪水の原因を聞く

 先週から1週間ほど、全国各地で被害をもたらした洪水の原因について、インドネシアの気象を30年以上研究する山中大学(まなぶ)海洋研究開発機構上席研究員に聞いた。
 ―今年も洪水被害が広がりました。降水量増加などが原因でしょうか。
 昨年や2007年と比べると今年の降水量は多くない。ただ、局所的な大雨の被害が報告された。事例の検証が必要だが、被害は中央や州政府の対応の遅れによるものが大きいだろう。地方での洪水被害も確認されたが、降水量が増えたのではなく、都市化が進み、開発が進んだために被害が報告されるようになったのではないか。
 ―インドネシアは世界で最も雨が降ると言われています。特にジャワ島の雨の原因は何でしょうか。
 大きく分けて四つの原因があることが分かっている。?インド洋や太平洋の海水温上昇?シベリアからの季節風?インド洋から東進する雲?ジャワ島とジャワ海の間の海陸風―13年と07年はこれら全ての要素が一度に来たために大雨が続き、洪水になった。
 今年は?と?の影響のみで、インド洋からの雲もすでに通過した。約1カ月後に再び雲が通過することが予想されるが、すでに雨期も終盤なので、まとまった雨には結びつかないだろう。
 ―対策はどう取られているのでしょうか。
 ジャカルタの気象観測では08年に気象レーダーが運用開始され、降雨状況の監視が可能になった。データが蓄積されれば対策も進むだろう。政府が人と予算を割けるかが課題になってくる。
 ―今後も洪水被害は続くのでしょうか。
 レーダーが設置されても洪水被害をいきなりゼロにすることは不可能だ。日本でも減災という言葉が認知されだしているが、災害が発生したときにいかに被害を少なくするかという発想が重要だろう。レーダーの情報を基に公共事業省や国家防災庁の対策が重要だ。ただ最近では洪水後の水が早く引くようになった。11〜12年のタイのような洪水がインドネシアで起こるとは考えにくいだろう。(高橋佳久)

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