国外批判に政府関係者が反論 映画「アクト・オブ・キリング」
1965年の9.30事件以降に起きた、インドネシア共産党支持者の粛清を描いた映画「アクト・オブ・キリング」は、描写が客観的ではない上、真相究明が続いているとして、インドネシアの政府関係者が国外からの批判に態度を硬化させている。
映画は加害者らが自らの犯した罪を自慢げに語る様子が国内外の視聴者に衝撃を与えた。北スマトラ州メダンで絶大な勢力を持つ自警団「プムダ・パンチャシラ」のメンバー3人の証言や虐殺の再現シーンを中心に据えている。
トゥク・ファイザシャ大統領報道官(外交担当)は「インドネシアが1960年代当時と変わらず残忍で、無法地帯のままであるかのように描いており、不適切だ。どの国も反省すべき歴史を持つが、解決には時間を要する」と不快感を示した。
国家人権委員会のイマドゥダン・ラフマット委員は、過去の人権侵害の清算や、関係者間の関係修復の目的は共通するとした上で、映画の描写が被害者の心の傷を開いたと主張。「共産党関係者を取り巻く環境は大きく改善した。真相究明の取り組みも継続しており、人権侵害が放置されたという国外からの批判には当たらない」と話した。
ただ、歴史家の中には、政府の積極的な支援なしには真相究明は困難だとの見解がある。政府が所有する関連文書を公開していないことや、国家の統一を守るため、共産党員の粛清が必要だったとの見解が国民に浸透していることが理由だ。
中国では新聞やソーシャルメディアで、インドネシア政府へ強い姿勢を取るよう中国政府に求める投稿が相次いだ。映画で初めて、中国系市民が虐殺で犠牲となったと知り、中国の歴史教科書に記載を求める声もあった。