中づり広告も「第二の人生」 鉄道網拡充で新たな媒体に 首都圏走る日本の中古電車
東急田園都市線、都営三田線、東京メトロ東西線―。インドネシアへ輸出され、ジャカルタ首都圏の通勤者の足として活躍する日本の中古電車。車内の中づり広告やドア横広告のスペースがそのまま再利用され、日系企業の広告も掲載されている。首都圏の鉄道網拡充に伴い、これまであまり利用されてこなかった電車が新たな広告媒体として注目されている。
西ジャカルタ・コタ駅発西ジャワ州ボゴール行き。元東急8500系などの8両編成の車両中にあるドア横には国営通信テレコムセル「プルサ(プリペイド)」、中づりには栄養剤「レドクソン」などの広告が取り付けられ、利用者の目を引いている。
中づりは1両に8カ所のスペースを設け、ドア横は16カ所。他にも天井パネル、つり革などにも広告が貼り付けられている。1車両を丸ごとラッピングした車体広告もある。同路線利用者のイルワンさん(56)は「車内の壁がはがれ落ちていた数年前と比べたら様変わりした」と話す。
首都圏の路線を管理・運営するKAIコミューター・ジャボデタベック(KCJ)の広告担当者によると、首都圏沿線の1日の平均利用者数は40万人で、昨年7月に実施した料金値下げで利用者数が急増した。2019年までには1日120万人まで増加するとの試算もある。「利用者数増と相まって広告掲載を希望する企業も増えている」と強調した。
日系企業の広告もある。塗料大手の日本ペイント(大阪府堺市)と技術提携する「ニプセア・ペイント・アンド・ケミカル」は今年1月からKCJ車両内に広告掲示を開始した。
塗装で使うはけやペンキ缶にデザインされたつり革広告など、利用者の注目を集めるよう工夫を凝らしている。西ジャワ州ブカシ駅から通勤する会社員のウィスナさん(22)は「ブカシ周辺では住宅の建設ラッシュだから、家を建てたばかりの人の関心を引くと思う」と話した。
同社の広報担当者によると、人口が集中する首都圏で、マイホーム需要が高まる郊外からジャカルタへ通う通勤者を対象に塗料商品をアピールしている。
電車広告については慎重な意見もある。日系広告代理店の担当者は「各路線の時間帯ごとの利用客数など不明な点もあり、広告効果が分かりにくい。テレビや新聞広告の方が効果が高いだろう」と指摘した。日系企業の中で電車広告を検討する企業はまだ少ないという。
KCJは09年から日本の中古車両の輸入を開始し、12年までに308両を購入。昨年12月末までにJR東日本埼京線を走っていた205系車両など180両が到着した。19年までに毎年160両を購入する計画がある。(小塩航大、写真も)