石油貿易赤字→20%増 燃料補助金→25%増 2013年、ルピア安で 輸入負担増が鮮明に
2013年の石油輸入による貿易赤字拡大と政府財政への負担が鮮明になっている。政府は補助金付き燃料値上げを断行したが、燃料補助金はルピア安の影響で膨張。さらなる対策が迫られるが、「不人気政策」に対して選挙を控えた政府の腰は重い。
中央統計局(BPS)が2日に発表した貿易統計によると、2013年1〜11月の原油・石油製品の赤字は前年同期比で20%膨らみ、252億ドル(約2兆6千億円)になった。同期の全体の貿易赤字は56億ドルのため、石油燃料が大幅に赤字を増やしていることになる。
さらに財務省予算総局によると13年の燃料補助金は暫定値で、補正予算の割当199兆9千億ルピア(約1兆7千億円)を最大25%上回る、240兆〜250兆ルピアに達した可能性がある。
原因はルピアの対ドルでの急な下落。補助金燃料の消費は割当量を下回ったが、ルピアが20%以上下がり輸入コストが増えた。
ブディオノ副大統領は2日、「必要ならば(補助金付き燃料値上げを)政府はためらわない」と述べ、補助金削減が改めて必要になっているとの認識を示した。
巨額の燃料補助金は毎年、財政を圧迫している。14年予算では、車両向けの燃料補助金が歳出全体の15%を占める。想定為替レートは現在の1ドル1万2200ルピアとかけ離れた1万500ルピアに設定しており、さらに膨らむ可能性が高い。
インドネシアは2000年代初めまで石油純輸出国だったため、補助金で国内販売価格を引き下げても大きな問題とならなかった。しかし、国際原油価格が年々上昇。内需も増大し、純輸入国に転落してからは、貿易赤字の主因になっている。「燃料補助金ではなく、インフラ整備など『生産的』な事業に予算配分すべきだ」(中銀幹部)との意見も根強い。
浮上する度に大規模な反発があり、歴代政権を揺るがしてきた「不人気政策」にブディオノ氏が触れたのは、この半年ほどでルピア安や貿易赤字など、経済の根幹に関わる問題が深刻化していることの現れといえる。
■燃料消費管理目指し 識別装置導入進める
政府は昨年、燃料補助金削減に向けた対策として、車両ごとの補助金付き燃料の消費量管理を規定した。電波個体識別装置(RFID)を、昨年9月からジャカルタのガソリンスタンドなどで車両の給油口に無料で取り付けている。給油所の補助金付き燃料の給油機のノズルに読み取り機が付いており、車体ごとの給油量のデータを国営石油プルタミナが管理する。 政府、国営企業の車両や鉱業・農業用車は補助金付き燃料の使用が禁止されているが、違反が横行しており、補助金付き燃料の使用制限を徹底する。将来的には、登録車以外は補助金付き燃料を購入不可能にすることで、違反を減らす狙いだ。
さらに個人消費の上限設定や高級車や複数台の所有者の補助金付き燃料購入禁止を通じた消費抑制も計画する。まずはジャカルタ内で実施。徐々に地方にも広げ、6月には全国で導入する方針だ。
ただRFID調達会社のインティは、地元メディアに対し、13年中に州内450万台の車両への取り付けを目指していたが、実際には17万台と目標の5%にも満たず、大幅に遅れていることを明らかにした。
補助金支出を抑えるため、現在は固定されている補助金燃料価格を変動制にし、補助金部分のみ固定する方式に変える案もある。だが調達費用の変動を消費者に転嫁することは、実質値上げとなり、選挙を控える今は難しい。
政府はまた、国産パーム油から作るバイオ燃料の軽油への含有率を昨年9月に7.5%から10%に引き上げるなどして燃料輸入の抑制を図っている。ただ自動車は年100万台以上、二輪は700万台以上の販売が続いており、補助金抑制の決め手になるかは疑問だ。(堀之内健史)