「年央まで減速基調 後半は成長軌道に」 三菱東京UFJ銀の 勝田新支店長に聞く 今年の経済展望

 5年に1度の選挙の年。失速気味のインドネシア経済はどのような道筋をたどるのか。昨年12月に着任した三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店の勝田祐輔新支店長(51)は「年央までは減速基調だが、後半は成長軌道に戻るだろう」との見通しを示した。
 昨年の経済について、「2010年から6%以上の高成長と安定したインフレ率を両立させてきたが、昨年は異なった。夏以降、ルピアがそれまでの水準から修正され、株、債券も年初から相当下落した。金融市場ではトリプル安と言ってもおかしくない。年半ばぐらいから波乱の年だった」と振り返る。
■どうなる消費活動?
 一方、直接投資は過去最高のペース。経済成長率は鈍化しているが、第3四半期まで見ると、内容は堅調と言う。
 「なぜ約4年ぶりの低成長かというと、内需が堅調なゆえに輸入が増え、輸出が伸び悩んでいるため純輸出が減っているのが大きな要因。中銀は(内需を抑制するため)昨年金利を1.75%上げたが、数字上は消費を冷やすまでは至っていない」
 ただ、今年の第1〜2四半期には、ルピア安や金利上昇の影響が出て、消費の下押し材料になる可能性があると指摘する。「原材料の値上がりが本格的に販売価格に転嫁されるのはこれからという話も聞く。そうなった場合に消費の動きがどうなるかを心配するお客さんもいる」と話す。
■投資意欲衰えず
 選挙の影響について、「多くの顧客は、政権によって経済政策のシナリオが大きく変わることはないとみているのではないか」と勝田支店長。7月の大統領選が終わるまでは不透明感が生じ、米国の金融政策などの外的要因と合わせて市場が大きく変動する可能性はある。しかし、大統領が決まれば、海外からの資金も入りやすくなるとみる。
 直接投資では、自動車関連が一服し、今年前半は選挙の動きを見据えながら様子見が続く可能性はあるが、日本からの投資意欲は衰えないと指摘。「年半ばぐらいまで減速基調は続きながらも、大統領が決まって不透明感が払拭され、アンバランスになっている国際収支の調整が済めば、年後半は元の成長軌道に戻っていくだろう」と話した。同銀では、今年の成長率は5.6〜5.8%で昨年と同じかやや高め、昨年8%超だったインフレ率は5.0〜6.0%まで下がると予測している。
■日系でもジョコウィ人気
 10月に誕生する新政権に対しては、外資規制緩和や投資インセンティブ(優遇措置)のほか、港湾や道路、電力などインフラ整備を着実に進める実行力を期待する向きが多い。国政運営は未経験ながらも、ジャカルタ特別州知事としてらつ腕を振るうジョコウィ氏の人気が日系企業の間でも高いという。
 政府は11年に、インフラ整備などを柱とした経済成長促進・拡大マスタープラン(MP3EI)を打ち出した。15年間で4012兆ルピアの投資が必要と弾き出し、半分は民間からの調達を見込んでいる。だが、インドネシアの金融規模は周辺他国と比べても小さい。勝田支店長は「このままでは金融インフラもボトルネックに陥ってしまう。そこに黒子である金融機関の役割があるだろう」と話した。(上野太郎、写真も)

◇勝田祐輔(かつた・ゆうすけ)
 1962年9月、岡山県生まれ。86年大阪大学経済学部卒、東京銀行(当時)入行。大阪支店支店長代理、投資銀行企画部調査役、大阪営業本部大阪営業第3部長、国際企画部部長などを経て、2013年12月からジャカルタ支店長。海外駐在はニューヨーク、独デュッセルドルフに次ぎ3度目。趣味は音楽鑑賞と水泳。

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