公共交通中心に街作り 住宅地→商業地の変更も 首都で都市計画条例
2012年8月から議論されてきたジャカルタ特別州都市詳細計画・用途地域条例がこのほど、州議会で可決された。2030年までの都市計画条例(12年第1号)を細分化した規定となるもので、土地の区分を決める用途地域の見直しやインフラ計画、緑地計画が郡ごとに定められた。高さ規制が明確になることで、高層建築の建設促進が見込まれ、州政府は、土地の有効活用により公共交通を中心とした街作りを目指す。
条例には①洪水への対処を考慮した水利用計画②大量輸送機関に対応するインフラ計画③緑地計画④州内44郡の用途地域の見直し―の4点が盛り込まれた。
用途地域では、これまで1種類だった住居地域について、容積率ごとに4種類の用途地域を規定。高層住宅の建設を進め、緑地を確保する計画だ。
■クマンなど商業地区に
郡ごとの土地利用規制では、南ジャカルタのクマンやテベットが住宅地から商業地区に変更となり、実情を反映した形となった。
クマンでは、本来は商店を経営できないが、観光局が営業許可を出している店舗もあった。今回の変更により商業地域に指定されることで、駐車場や店舗前面の歩道設置が義務化され、徴税強化にもつながる。ただ、同州のガマル・スヌラット都市計画局長はすでに営業している店舗に「規定を強制することはできない」と話している。
■緑地面積引き上げる
また、州は緑地面積の拡大にも取り組む。現在州内の公共緑地面積(主に公園)は約10%だが、30年までには16%を目指している。規定ではショッピングモールなどの敷地に60%以上の緑地化を義務付けており、商業地域全体の緑地面積は14%を目標にし、30年までには公共緑地面積と合わせて計30%に引き上げる。条例案の策定に関わったトリサクティ大学講師のヤヤット・スプリヤトナ氏によると、1%の増加で独立記念塔広場の10倍の面積の緑地が増えることになるという。
インフラ計画では、鉄道やトランスジャカルタなどを中心とした交通計画が進められる。公共輸送機関の利用促進を目指し、最寄りの駅やバス停まで自家用車で行き、そこで鉄道やバスに乗り換える「パークアンドライド」用の拠点を17カ所に設置する予定だ。
■罰則の対象拡大も
これまでに用途地域と異なる建造物を建てた場合、建てた関係者のみに罰則があったが、新条例では許可を出す州側にも罰則が科されるようになる。「お金で解決できるのが現状のようで、建設許可が途中で取り消されたことはない」(日系建設会社関係者)というように、インドネシアでは建設許可を発出する前に工事が開始されることも多かった。
ジャカルタに限らず、国内の都市計画はこれまで、新空間計画法(2007年第26号)に沿って計画されてきたが、州が郡ごとの用途規制を定めたのは初めて。ガマル局長は「ジャカルタの用途地域が他都市の規範となり、都市計画の細則が定められることを期待する」と話した。 (高橋佳久)