「国家損失」640億円に 不良債権処理難航、再建とん挫 センチュリー銀汚職

 中堅銀行のセンチュリー銀(現ムティアラ銀)に対する会計検査院(BPK)の監査で、国家損失額が7兆4515億ルピア(約640億円)に上ることが判明した。預金保険機構(LPS)も事実上の経営破綻を発表し、公的資金7兆ルピアをつぎ込んだいわく付きの銀行の再建はとん挫した。
 BPKは23日、監査結果を汚職撲滅委員会(KPK)に渡した。KPKのアブラハム・サマッド委員長は「市民に新しい事実を伝えられることになるだろう。(先月の)ブディ・ムルヤ元中銀副総裁の逮捕が新しいドアを開いた」と捜査を進展させる考えを示した。サマッド委員長就任以降からKPKは関係者の聴取を進め、スリ・ムルヤニ元蔵相に加え、先月、当時中銀総裁を務めたブディオノ副大統領も聴取した。
 注入時に副大統領だったユスフ・カラ氏(ゴルカル党)は同日、南スラウェシ州マカッサルで「救済は正しいルールに則って行われず国に損失をもたらした」と非難。カラ氏は先月の任意聴取後、ユドヨノ氏が外遊中のため大統領の職責を担っていた自分を除いて、ブディオノ氏らによる金融制度安定化委員会(KSSK)が独断で注入を決定したと説明している。国会も追及の姿勢を強め、センチュリー銀救済調査委を来年9月まで設置され、選挙をにらんで与党民主党への攻撃が続くとみられる。
 当初予定の十倍に膨れた公的資金の使途で明らかになったのは一部。最高裁は当時筆頭株主だった実業家のロバート・タントゥラー受刑者が2億2千万ドル(約230億円)を不正な方法で自分が関連する会社などに融資したと認定。大株主の英国籍のラバット・アリ・リズヴィ氏、サウジアラビア国籍のヘシャム・アルワラク氏は海外逃亡し、海外に流した不正な資産を管理しているとみられる。ただこれらも7兆ルピアの一部にとどまる。
◇ム銀再注入、会社精算へ
 預金保険機構(LPS)は23日、ムティアラ銀の90日以内の清算を発表。当初予定の注入額は1兆5千億ルピアで同銀の自己資本比率を14%まで高めると説明していたが、実際の注入額は1兆2490億ルピアにとどまった。
 一部報道によると今後、化学会社TPPIへの債権の整理が課題になりそうだ。ほかにも、ロバート受刑者が保有するアンタボガ・デルタ・セキュリタスの金融商品の販売をめぐる訴訟で、アンタボガの倒産により損失を出した個人投資家に4100億ルピアの支払いを命じられている。だが、同銀幹部は支払う意志を否定。これらの問題は暗礁に乗り上げている。

 センチュリー銀行(現ムティアラ銀) 前身が1989年に創業、04年の合併でセンチュリー銀に改める。リーマン危機のあおりで08年11月経営破綻。政府が株式99.9%を管理し、ムティアラ銀に改名。貸付金残高11.1兆ルピア。従業員1500人。融資先は中小企業が多い。

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