公的資金130億円再注入へ 中銀の自己資本規制強化で 前センチュリー銀に 横領・汚職に拡大のさなか
預金保険機構(LPS)は金融機関への規制を厳格化するのに絡み、破綻以降再建のめどが立たないムティアラ銀(前センチュリー銀)に1兆5千億ルピア(約130億円)の公的資金を再注入することを決めた。だが、前回の6兆5千億ルピア(560億円)注入は横領・汚職に発展。注入後も依然自己資本比率が低い状態で、再注入の正当性が問われそうだ。
中銀は19日、国内銀の自己資本規制を厳格化する中銀令2013年15号を発布。自己資本の量と質を高める国際規制「バーゼル3」を、国内銀に段階的に導入することを目指す。来年1月から、投資や融資などの高リスク資産に対して、内部留保、普通株など低リスク資産の割合を高めることなどを規定している。バーゼル3はリーマン危機以降、再発防止のために策定された。中銀令では、バーゼル3の細目を19年までに全適用する方針も盛り込んだ。
同中銀令では、15年末に発足するASEAN経済共同体(AEC)への対応が規制強化の目的としている。ASEANはサービス業分野での統合も視野に入れ、銀行業をめぐる規制、制度の互換性を上げることも検討。ASEAN内でバーゼル3を導入しているのはタイだけ。
国内銀行の経営の健全性底上げを進める中、自己資本比率が8%以下のムティアラ銀の状態を疑問視する見方がある。今回決まった公的資金1兆5千億ルピアの使途は、自己資本比率を現行の8%から中銀令12年14号が定める最低基準14%以上まで上げるため。英字紙ジャカルタポストによると、1兆5千億ルピアの内訳は9228億ルピアを自己資本の増強、6030億ルピアをセンチュリー銀時代から引き継いだ不良債権の処理に充てる。
LPSは20日に出したプレスリリースで、同銀への公的資金注入を23日までに終えると発表した。LPSは公的資金注入後にムティアラ銀の健全化が済み次第、同銀株99%を民間に売 却する方針。04年のLPS法は救済した金融機関の株式を売却することを定めている。LPSは12年10月から売却の意志を示していたが、買い手が付かない状態だった。
同銀の救済をめぐっては09年総選挙前の注入が、横領・汚職事件につながった。09〜10年にかけ、ユドヨノ政権攻撃の材料となり、改革派のスリ・ムルヤニ蔵相が辞任。汚職撲滅委(KPK)は先月、ブディ・ムルヤ中銀元副総裁(金融政策担当)を逮捕した。先月、資本注入時に中銀総裁を務めたブディオノ副大統領も聴取した。(吉田拓史)
預金保険機構(LPS) アジア通貨危機で破綻した金融機関を支える仕組みがなかったことを鑑み、2004年成立のLPS法に基づいて発足。破綻した金融機関の預金保護や、金融機関への公的資金注入が主な役割。
センチュリー銀横領・汚職事件 センチュリー銀が08年11月に経営破綻後、政府、中銀は金融制度安定化委員会(KSSK)を開き救済を決定。公的資金注入額は当初予定の6320億ルピアから6兆6720億ルピアへと膨らんだ。この資金の一部が横領された疑い浮上し、同銀元オーナーら4人に有罪判決が下った。