「個人消費に陰りも」 来年成長率5.3%に鈍化 世銀予測
この数年の好調なインドネシア経済をけん引してきた個人消費が減速するとの懸念が出ている。世銀は16日、4半期ごとに発表しているインドネシアの経済報告書で、来年の経済成長は鈍化し、これまで堅調な個人消費にも陰りが見える可能性を指摘。早急なマクロ経済の安定化を目指し、金融政策や為替レートの調整をしているものの、輸出額を引き上げ、長期的な高成長を遂げるためには、さらなる構造改革が必要として、政府や中銀の対応を促した。
世銀の予測では、インドネシアの経済成長率は今年が5.6%で来年は5.3%まで低下。今年第3四半期に機械・設備を中心とした投資支出の伸びが5期連続で低下し4.5%へと鈍化したことが大きな要因と指摘している。
世銀のロドリゴ・チャベス・インドネシア代表は「不安定な市場と対外的な金融引き締め、輸出需要と資源価格の低下により、インドネシアにとっては困難な年となっている」との見解を表明。「インドネシアにはより多くの投資が必要で、政策決定者が長期的な投資に焦点を当てることで経済が改善する。金融政策は主要な政策対応にはなり得ない」として、直接投資の重要性を強調した。
米国の金融緩和縮小により世界経済の不安定さが増し、インドネシアの対外収支にも影響を与えると分析。石油燃料補助金支出により財政がぜい弱な状況が続くとしている。
また、輸入の伸び鈍化と輸出の穏やかな増加により、貿易赤字は今年見通しの310億ドル(GDP=国内総生産=の3.5%)から来年には230億ドル(同2.6%)まで減少すると予測。赤字削減のためには、規制により輸入を減らすのではなく、輸出を増やし、直接投資を主とする海外からの資金確保に比重を置くべきと提言した。
世銀のンディアメ・ディオプ・インドネシア担当主任エコノミストは「投資融資のためにはビジネス環境の改善が鍵となる。貿易や運輸分野の規制緩和は輸出増のための即効薬となる」との見解を示した。
■副大統領「来年は回復」
ブディオノ副大統領は同日、来年の成長率は今年よりも改善するとの見通しを表明。「(6.5%だった)2011年のように6%を大きく上回るのは難しいが、改善するとみている」と話した。
今年のインフレ率はここ数年の水準である4〜5%を上回る8%に達すると予測し、「石油燃料値上げやコメ以外の食料品価格の高騰などが物価を押し上げた」と話した。
成長率の推移について、副大統領は「11年は、輸出が減少しながらも、投資と個人消費が成長を押し上げた」と説明。今年は輸出の減少と燃料を主とする輸入の増加による貿易赤字拡大が成長鈍化の大きな要因となったが、来年は投資と個人消費も好調を維持し、再び高成長への軌道に乗るとの見解を示した。(上野太郎)