「ルピア安続く」 林副支店長が予測 BTMU講演会

 28日にジャカルタのホテルで開かれた三菱東京UFJ銀行(BTMU)ジャカルタ支店の経済講演会で、同支店の林哲久副支店長は「インドネシアルピア底入れの条件」と題して講演した。来年のルピア相場動向について、現在の経常収支、貿易収支の赤字が続くことが予想される中、米国の量的緩和縮小が引き金となり、ルピア安が一層進む懸念を指摘。「可能な限り長期にルピアのリスクヘッジを行う必要がある」と呼び掛けた。
 林副支店長は、世界や日米の経済、相場の現状、展望について触れた後、インドネシアの経済動向について解説した。
 今年は6月の燃料補助金の削減によるインフレ上昇が最大のトピック。インフレが8%台まで上がり、国債市場の混乱を招き、大きくルピアが売られることになった。高いインフレが続くかに注目が集まるが、来年6月以降は燃料値上げの影響がなくなるため、中銀は来年は5%に収まると予測し、経済成長率は6%まで戻るのが一般的な見方という。
 貿易収支の悪化について、精製能力の不足や好調な自動車販売を背景に、石油製品の赤字幅が拡大していることが最大の要因と指摘。通年で赤字となるのは、これまでに1968年の一度だけで、貿易構造が変わってきている一つの兆候との見方を示した。
 来年に米国の量的緩和政策が解除された場合、資源の市況は上昇しにくく、輸出は伸びない一方で内需は好調が続くと見通し、貿易赤字が恒常化する可能性があると分析した。
 そのような状況を踏まえた上で、「ルピア相場自体が大きな均衡点を探って調整を続けている最中と考えた方が良い」との見方を表明。過去10年で、2008年のリーマンショック後など何度か記録した1ドル1万2500ルピアが一つの目安になると予測した。当時と異なり現在は経常収支と貿易収支が赤字のため、一層のルピア安を招く懸念があると指摘。また、そのレベルを超えるとかなり多くの内需型日系企業の損益分岐点に達するとして、不測の事態への対処が必要と呼び掛けた。
 一方、資本収支の黒字がこの2、3年続いているのは良い兆候と説明。以前は証券投資が中心だったが、近年は直接投資がルピア相場を支えているとして、「中長期的なインドネシアの大幅安が避けられる可能性もある」と話した。
 金利について、市場金利、政策金利とも上昇が続く可能性が高いと予測。借り入れの長期化を進めることで金利リスクの回避を図る必要があるとの認識を示した。
 構造的な問題が依然多く、短期的な即効性のある施策は難しいと指摘。次期大統領有力候補に上がるジョコウィ氏は実務能力、透明性が高いリーダーと言われており、そのような人がこれからの10年を担うことになれば、海外投資家の評価も前向きになる可能性があり、動向を注視すべきとした。(上野太郎、写真も)

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