電子コミック、販売開始 スマホで1冊1ドルから コンパス・グラメディアグループ
インドネシア出版最大手のコンパス・グラメディア・グループは29日、電子コミックの販売を開始した。テレビ放映がある人気のアニメと比べ、紙媒体のマンガは書店のある都市部以外の地域では入手が難しい。急速に普及するスマートフォンを利用し、電子化を進めることでマンガの新たな市場開拓を目指す。
日本のマンガなどを翻訳出版してきた同グループ系列のコミック出版社「m&c!」が、アンドロイド端末向けコンテンツの配信サービス「グーグル・プレイ」を通じ、電子コミック書店「Gramedia Digital Comics」で販売する。
国内では出版物の35%をマンガが占めるが、全国にある大手書店は約200店。このうち約半数はグラメディアで、書店でマンガを購入できるのは都市部に限られる。近年、遠隔地でもスマホ所有者が急増しており、スマホでマンガを読むことを普及させることで販路拡大を狙う。
電子書店ではまず無料ダウンロードできる作品を多数用意。特にインドネシアのマンガ家の作品を中心に、無料閲覧してもらうことで電子コミックに親しんでもらうという。
紙のマンガは1冊1万7500ルピアが最低価格だが、電子版では1ドル前後(約1万千ルピア)から用意した。通信環境も考慮し、ファイルの軽量化も重視。第1号の配信作品「ナンナンス・デイリー・ライフ」(作者アナンダ氏)は170ページで24.5MBに押さえた。
専用の閲覧アプリは不要。マンガをダウンロードすれば、ページ、コマごとの閲覧、ジャンプやブックマーク(しおり)機能などが使用できる。
■宣伝フェアを重視
電子コミックの市場開拓は、経済産業省の今年度クール・ジャパン戦略推進事業で、ハラル日本食支援とともに、インドネシアに特化した事業2件のうちの1つ。スマートフォンを使った日本のマンガ市場を拡大するため、紙媒体のマンガから電子化するにあたり、日本の出版社との調整を図り、出版社が個別にインドネシアでのパートナー探しなどをする手間を省く。
事業費は約5千万円。書店やショッピングモールなどでの電子コミック販売促進フェア開催など、市場開拓に向けた宣伝活動に充てる。事業費に電子コミック制作や版権取得の費用は含まれない。
コンパス・グラメディア・グループと提携し、電子コミック事業を進めるNHMマネジメントコンサルティング(東京都中央区)の中川勉社長は「新しい市場を作り出すのが目的。日本のマンガを読みたくても近くに書店がなく、購入できない人々はたくさんいる」と指摘。日本の大手をはじめ、中堅出版社や地方自治体、漫画家などとも連携し、インドネシアに作品を紹介するほか、インドネシアの漫画家育成にも取り組んでいきたいと話した。(配島克彦、写真も)