就職支援の充実がカギ 日本大使館、労働省が説明会 帰国のEPA看護師介護士候補者
日本・インドネシアによる経済連携協定(EPA)の看護師・介護福祉士受け入れ事業で帰国したインドネシア人候補者の再就職を支援しようと、在インドネシア日本大使館と労働移住省を含む3省庁は27日、労働移住省カリバタ事務所(南ジャカルタ)で就職説明会を開いた。
説明会は今年で3回目。2008年に始まった同事業の帰国者計190人と、日系企業(人材派遣や製造業)や地場系医療機関など38機関とのマッチングの場となった。
高齢者向けおむつを販売するユニ・チャーム・インドネシアは、日本で経験を積んだ介護福祉士候補者の採用を検討している。ブースでは、先輩候補者で同社に就職した人がプレゼンターとして「日本での経験が仕事に生かせる」とアピールした。
同社の根岸大輔氏は「紙おむつ交換など高齢者介護を体験した人材が欲しい。帰国者には日本で培った経験や日本語能力を発揮できる場所がある」と歓迎の意を示した。
中央ジャカルタの商業施設プラザ・スナヤン内にクリニック開業を予定する医療法人・偕行会(名古屋市)はEPA看護師候補の経験者を採用している。今回の説明会では特に人工透析の経験者を探した。同会の加瀬美紀氏は「日本の医療を熟知した人材がいるのは貴重な存在だ」と強調した。
同日夜には、鹿取克章大使が大使公邸に帰国者を招き慰労会を催した。
■支援体制の充実を
日系企業の求人はある一方、医療機関に就職する経験者は少数だ。
「インドネシアの医療施設で働きたいが、支援体制が整っていない」と第2陣介護福祉士候補者のスリ・オクタソタさん(29)はこぼす。
帰国後、インドネシアの医療機関の情報を収集したが、日本での介護経験が生かせる場所がほとんど無かった。給与も低く、必然的に医療機関で働く選択肢は無くなった。
「医療機関が日本での介護技術を経験した人材を必要としていない。保健省は有能な人材の普及に取り組んでいるが、ニーズがない」と肩を落とす。
日本大使館によると、EPA看護師・介護福祉士候補の経験者のうち、医療機関で働く人の割合は少なく、日本語能力を生かし日系企業への就職を選択する人が多いという。
第1陣介護福祉士候補者のニルマナさん(26)は「いつかは医療機関に戻りたい。でも夫との生活を考えると、福利厚生など待遇の良い日系企業で働く方が魅力的だ」と話した。
08年から開始された同事業の看護師・介護福祉士候補者数は計1048人。うち日本の国家試験合格者数は看護師が71人、介護福祉士が121人の計192人。昨年の合格率は看護師13%、介護福祉士37%と低水準にとどまっている。(小塩航大、写真も)