腕時計作り1世紀 セイコーの名工が実演 ものづくりセミナー

 インドネシア日本友好協会(PPIJ)は14日、腕時計大手セイコーウオッチの服部真二社長(セイコーホールディングス会長)らを招き、中央ジャカルタのホテルで「ものづくりセミナー」を開いた。盛岡セイコー工業内の雫石高級時計工房に所属し、高級機械式時計の組立師の桜田守氏と彫金士の照井清氏が腕時計作りを実演。2人は「現代の名工」と称される厚生労働省の卓越技能賞に選ばれ、黄綬褒章を受章しており、集まった約100人の出席者は、精密な作業を息を呑んで見守った。                             
 冒頭に講演した服部社長は、セイコーの歴史を紹介。インドネシアでは1968年にアジア・ジャヤ社と販売代理店契約を締結し、現在は専門店9店のほか、600店で販売しているという。
 また、腕時計作りを開始した1913年から今年で100年となったと説明。「セイコーは部品から組立まで1社で行う垂直統合型の世界でも数少ないマニュファクチュール(一貫生産工場)。(腕時計生産で知られる)スイスでも部品ごとに別工場で作る水平分業型がほとんどだ」と話し、ものづくりへのこだわりが優れた製品を生み出すと強調した。
 桜田さんは、200ルピア硬貨ほどの直径の基盤に120個の部品をピンセットで取り付けていく作業を実演した。薄さは1.98ミリ。生産できるのは1日1個という。
 0.25ミリの薄さの板に0.15ミリの深さで模様を彫る。照井氏は「もっと良い物が作れる、もっと時間を縮められる、というどん欲さがないと工夫や努力をしない」と話した。
 セミナーは、PPIJが松下ゴーベル財団の支援を受け、定期的に開いており今回が5回目。在インドネシア日本大使館、ジェトロ(日本貿易振興機構)ジャカルタ、元日本留学生協会(プルサダ)などが後援した。PPIJのラフマット・ゴーベル会長は「日本の投資はただ単にお金を持ってくるだけではない。産業を振興するには人づくりが欠かせない。ものづくり精神を通じ、日本の文化や勤勉さを伝え、インドネシアの製造業が付加価値を高めるきっかけにしたい」とセミナーの趣旨を説明した。(上野太郎、写真も)

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