斜陽のブラックベリー王国 人気アプリBBM、他端末に公開 SNS注力、生き残り図る
インドネシアのスマートフォン(多機能携帯電話)市場で、絶大なシェアを誇ってきたカナダの通信機器大手ブラックベリーの端末。その王国が崩壊しつつある。本格参入した2008年当初は高級端末として売り出し、富裕層のステータスシンボルとして普及した後、無料アプリ「ブラックベリー・メッセンジャー(BBM)」が火付け役となり、高額ながらも一気に一般市民にも浸透。その売りのBBMがこのほど、アンドロイド搭載端末やアイフォーン向けに公開された。ブラックベリーは牙城を守り抜くことができるのか、または競合社に席巻されてしまうのか。ユーザーらがその動向を注目している。
ブラックベリーは、市民の日常生活や仕事に不可欠ともいえる地位を確立してきた。ブラックベリー・インドネシアのアンドリュー・コブハム社長によると、世界の中でも高いシェアを確立できたのは、同社端末の特徴のキーパッド。両手で素早く入力できる機能が、インドネシア人の嗜好に合ったという。
さらに人気が不動になったのが、ユーザー間のみで利用できるメッセンジャーアプリBBMの存在だった。
だが、経営難に陥り買収が取り沙汰されるブラックベリー本社は、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの主要な担い手になる戦略に転換。BBMの普及こそが収益増につながるとして21日、無料提供に踏み切った。
南ジャカルタのモール・アンバサダー内で営業する携帯販売店の店員ロサさん(21)は「全ての人にとってBBMが利用可能になれば、ブラックベリーの利点が薄れ需要減は免れない」と指摘。それだけ現在のBBMの影響は大きいと強調した。
売り上げ増に奏功するとの見方も多い。同じ店のマルワンさん(26)は「他社端末利用者へのBBM普及は、ブラックベリーの市場拡大を後押しする可能性が高い」とみる。専門店の従業員は、ブラックベリー端末専用の音声・ビデオチャットなど限定機能が多い点を説明、「他社端末に比べアプリが優れていることは認知されており、市場はまだ安定している」と強気の見方だ。
携帯電話店とパソコンショップが並ぶラトゥプラザ(南ジャカルタ)では、ブラックベリー人気は不変だとの携帯電話店主の声があった一方、専門販売店のジョキ・ファライトディ顧問は「BBMアプリ公開により、ブラックベリーのシェアは確実に縮小していく」と言い切った。
米アップルのアプリストア「アップルストア」では、提供初日のダウンロード件数が1千万件を超え、登録が集中。インストールはすぐに可能だが、登録は順番待ちの状態が続くという。
ブラックベリーはアンドロイド版を9月21日、iOS版を同22日に提供開始すると発表していたが、公開前に非公式のアンドロイド版BBMが流出。混乱に乗じて大量の偽アプリが流れたため、公開を延期した。(高越咲希、写真も)