日本でも話題「虹の兵士たち」 連続ドラマ受賞 日本語版も出版
廃校寸前の小学校を舞台に貧しい子どもたちが奮闘する様子を描いた「ラスカル・プランギ(虹の兵士たち)」が日本でも話題になっている。22日に東京で開かれた国際ドラマフェスティバルで、同作品の連続ドラマ版が海外ドラマ特別賞を受賞し、日本語版の小説も出版された。
物語の主人公は、スマトラ島東沖の小さな島、ブリトゥン島の貧しい家庭の子どもたち。さまざまな問題を乗り越え、地元の小学校でたくましく育っていく。インドネシア版「二十四の瞳」とも言える内容で、2005年発表の原作小説はベストセラー。08年公開の映画は史上最多記録の約500万人の観客を動員し、昨年の東京国際映画祭の「アジアの風」部門でも上映された。
ドラマフェスティバルでは連続ドラマ版が招待され、韓国やタイの作品とともに海外作品特別賞を受賞。制作したミザン・プロダクションのプトゥット・ウィジャナルコ社長が受賞式典に出席した。
同フェスティバルは今年で7回目。主催は日本民間放送連盟や民放各局、NHK、映画・映像制作会社、団体などで構成する実行委員会で、総務省と経済産業省が共催。今年は日本のドラマでNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が作品賞のグランプリなど7部門で受賞し、話題をさらった。
インドネシアの作品が受賞するのは5年ぶり。ラスカル・プランギのドラマ版は11年12月から昨年2月まで、インドネシアの民放SCTVで各60分15話を放映。劇場映画も手掛けたプトゥット氏は「日本でインドネシアのドラマが評価されたことを誇りに思う。ドラマでは原作で展開された数々の物語を盛り込めた」と話す。
インドネシアのテレビドラマ業界について、事前にシリーズ全体の大枠を決めずに見切り発車し、決められた放映日時に追い掛けられるように脚本を練り上げ、低予算で制作していると指摘。「例外的に予算も時間も掛けた本作が国内外で認められ、今後の制作への励みになった」と語った。
■注文は5000冊超
原作の同名小説はアンドレア・ヒラタ氏の自伝的作品。米国や豪州など欧米のほか、中国、韓国、ベトナムなどアジア各国でも翻訳され、計19カ国で出版されてきた。日本ではサンマーク出版(東京都新宿)が21日、日本語版「虹の少年たち」を刊行した。
出版不況と言われて久しいが、海外の出版社の推薦もあり、同社編集者の武田伊智朗氏は日本でも出版しようと「レインボー・プロジェクト」を立ち上げた。全国の書店員から合計3千部以上の注文を受ければ出版するという企画だ。
日イ両国のイベントなどで活躍する加藤ひろあき氏や上智大アジア文化研究所の福武慎太郎氏が翻訳を担当。これを書店員に読んでもらい、共感が広がった。既に636書店から5088冊の注文が集まっている。
韓国の作品を出版したことはあったが、同社にとって東南アジアの小説を手掛けるのは初めてという。武田氏は「貧しくても個性的な子どもたちが力を伸ばしていく様子が生き生きと描かれている。日本でも読者を獲得できる」と話した。(配島克彦)